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第208話

「俺のDom様はね、かなり手厳しい方でね。俺がヘマをすると、ほら。こんなふうに」  男の人が、耳をよく見せてくれた。いくつもの穴。そこには、シルバーやゴールドのピアスが埋まっている。それと、指。指には、矢印を貫通させたようなハート型のピアスが開けられていた。 「ピアスを開けられてしまうんだ。それと、最近は開ける箇所もなくなってきたから、代わりにタトューを入れられてる」  あ、この見た目はこの人の《らしさ》じゃないのかもしれない。Domの着飾り人形。ひどいけど、そんな言葉が頭に立ち上った。 「……そんなにつらそうな顔しないでよ。俺は結構気に入ってんだから」  ふふ、と力なく笑うと男の人は僕を静かに見つめてくれる。 「今回もなにかのご縁だし、君と友達になりたいな」  「だめ?」と首を傾げられる。断ることはしたくなかった。Subの友達は僕にとって貴重だし、友達になれるなら、なりたい。 「お願いします」  男の人と連絡先を交換した。 「俺、菊方(きくほう) せつ。よろしくしてね」 「雛瀬です」  と言い終えてから、僕はこうもいった。 「雛瀬 李子です。よろしくお願いします」  下の名前、ちゃんと自分で言えた。相良さんと諸伏さんのおかげだ。それと、揶揄わずに名前を呼んでくれた透夏くんの力も。  連絡先を交換してから、しばらくその場でお喋りをしてた。そうしたら、汗をかいて走ってきた透夏くんが見えた。 「おま、どこ勝手にふらついてんだよ。おまえのDomからおまえのお守り任されてんだ。何かあったら俺がぶっ殺されるだろっ」 「ごめん……」

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