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第210話 ※
沈黙したままホテルの一室に連れられる。
僕の身体は相良さんの半径1mから離れられない。
「Crawl《四つん這いになって》」
かく、と足が床に落ちる。僕は床を見ていた。手足が4本、床につく。
その上から、衝撃が。
「っかは」
僕の手足は簡単に砕ける。相良さんが、僕の背中に足を乗せている。はじめは、やさしかった。軽く、ほんのり乗せるだけ。それが、どんどん重くなっていって。僕のおへそは床に埋め込まりそうになる。だって、こんなに体重をかけられて。このままでは、胃が潰れてしまう。
背中に鉄球を乗せられたみたいな感覚。ぐりぐりとおしりと背中を繋ぐ骨のあたりを踏まれている。
「っぐ」
相良さん。片足に身体の半分以上の体重を乗せているに違いない。腰が砕けそうだ。骨、みしみしいってる気がする。
「Roll《ごろん》」
今度は、お腹を見せて服従の意を示す。僕は床に背中をつけるだけでも顔が引き攣る。さっきまで踏みつけられていたそこが、床にあたってじくじくと痛むから。
目の前で見下ろしてくる相良さんの顔を見上げた。相良さんは無表情だ。色のない、パレットのようだった。瞳はつまらなそうに細められている。
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