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第213話

「……っどうしたら、許してくれますか」  自分でも泣いてるのかよくわからない。ただ喚いてるだけのようにも見える。こんな僕を相良さんに見せたいわけじゃないんだ。  僕の必死の懇願を彼は微笑んで受け取った。 「じゃあ、李子くんがぎゅうしてくれたら許す。それと、俺が言う言葉を復唱して」 「……わかりました」  僕はふらふらの足でよろけながら立ち上がると、相良さんの身体に抱きついた。反省していることが伝わるようにと、背中に回す手に力をこめる。  相良さんは、僕の背中には手を回さず、いつものように身体を屈めてもくれない。だから僕は、相良さんの胸元に頭を押し付けた。とくとくとく。規則正しい心音。この20センチ弱の身長差を今日は特に感じてしまう。 「好き」  相良さんの声、さっきまでと違って、柔らかい。復唱してと言われたので、相良さんの言葉に続けて言う。 「……好、き」  相良さんは、小さく息を吐いた。 「優希」  相良さんの下の名前。僕はまだ一度も呼んだことがない。 「ゆ、ゆうき」  呼び捨てにするの、すごく勇気がいった。 「もういっかい名前呼んで」  耳に聞こえる相良さんの心音が速くなる。  僕は顔を上げて口を開く。 「優希」  上を向いたら、目が合った。息を止めて、数秒見つめ合う。視線が僕を捉えて離さない。

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