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第217話

「よーし。会計するぞー」  え、待って。まだドリンクバーしか頼んでないんだけど。脱いでいた白いコートを羽織り出す透夏くんを呆然として見つめる。せつくんは? 振り返ると、彼も茶色くてボア素材のパーカーに腕を通しているところだった。 「え、無視……?」  僕は思わず心の声がもれる。それをきっ、と1睨みしてから透夏くんが言う。 「TPOわきまえろ、この無自覚DK」  いや、だから僕DKじゃないんだけど。 「りこち」  その呼び方をするのは、せつくんだ。ひそひそと僕の耳元で囁いてくれる。息があたって少しくすぐったい。 「りこちは初知りかもしれないけど、playの話は公共の場ではマナー違反になるのだよ。よく覚えておきなさい」  「ここテストに出まーす」と、大学っぽい教授のモノマネをするせつくん。  せつくんは自由自在な感じがする。好きなリズムで、好きなように振る舞う。そしてそれを許してくれる人が周りにいる。いいな、と純粋に思う。僕は人の顔色を気にしてばかりいたから。すいすいと泳ぐせつくんが眩しいんだ。手を伸ばしても届かないくらい、遠いんだ。

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