228 / 276
第231話
「……その顔、気づいてたって感じかな」
僕の反応を見て志麻さんが軽く頬を上げる。僕はじっくりと頷く。
「どうやって知ったの」
僕のことを問い詰める志麻さんの瞳が嫌だ。間違いを犯した人間を、追い詰める人みたいだから。
「……相良さんの、寝室のチェストの中に写真があって。相良さん。茶髪の男の人と笑ってて……」
「ああ、それね」
僕の言葉を軽く頷きながら聞くと、志麻さんが足を組み直した。
「あれ、俺が撮ったんだ」
「きれいだったでしょ」とも、彼は言うから。僕は素直に反応してしまう。そう、写真はとてもきれいだった。写真の中にうつる2人も、きれいだった。よく、似合っていた。
「あの美人が千隼。優希の元Sub」
ひゅっ。息が詰まった。僕はそれを志麻さんに悟られないように、鼻から静かに息を吐く。この、ごちゃ混ぜになった嫌な感情を捨て去るように。ゆっくりと、息を吐く。
ともだちにシェアしよう!