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第237話
「ここって……」
「ここは、サブドロップ患者のための有料介護ホーム。サブドロップになると、衣食住の自立をするのが難しくなる。だから、サブドロップ専門医のいるホームで暮らしているんだよ」
そんなものがあるなんて、初めて知った。じゃあ、あの廊下の部屋の中にはサブドロップ患者がたくさんいるんだ。
そう思うと急に心が寒くなった。
相良さんは車に乗り込むと駐車場を出ていった。それを見送ってから10分ほど待ち、志麻さんが車を発進させる。
あんな、あんなに。悲痛そうな相良さんの顔、初めて見た。毎月僕にお菓子をくれるとき、どんな気持ちだったんだろう。いい気持ちでないのは予想がつく。それでも、笑顔でお菓子をくれた。僕のために買っているのだと、嘘をついてくれた。僕が不安にならないように、悲しまないように。
悲しくてたまらないのは、相良さんのほうなのに。
自宅近くのスーパーの駐車場で下ろしてもらった。幸い、雨は止んでくれていた。別れ際、志麻さんが。
「自分のために、よく考えたほうがいい。それが、優希のためにもなるから」
なんにも、言えなかった。
部屋に入ってから、ベッドに横になってから考えたけど。頭が全然働かない。
サブドロップ。そんなに、悲しいことが起きることがあるんだ。mateになると。
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