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第244話
「僕たちは、僕たちらしくmateでいましょう」
相良さん。子どもみたいに顔をくしゃくしゃにしている。その顔を見られたくはないだろうから、僕は相良さんの後ろにまわって背中から抱きしめた。
僕の回した手が相良さんの胸の前で交差する。その手を、相良さんが撫でてくれていた。何度も、何度もさすって。母熊に抱きしめられて暖をとる小熊のように僕には見えた。
抱き寄せられる腕の逞しさに。
浮かび上がる顔の輪郭に。
僕は目を奪われていた。
僕のベッドの中で重なり合う度に、彼は名前を呼んでくれた。
「李子」
と、震える声で呼んでくれた。
それが嬉しくて僕は泣いてしまった。2人してせまいベッドに寝転んでお互いの目尻をぬぐい取る。
直に触れる熱を確かめるように、身体を寄せ合う。
「李子。大丈夫?」
その、心配そうに顰められる眉が好き。僕の胸を温めてくれる。
「大丈夫です」
「よかった」
ほっ、と安堵してから、相良さんが視線を僕から外した。枕の右側に手を差し伸べる。
「李子くん」
目の前に、白が迫ってきた。相良さんが買ってくれた赤ちゃんあざらしのぬいぐるみ。
「ベッドに置いてくれてたんだね」
それを持ち上げて僕の胸の上に置いてくれる。
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