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第246話 沈む

「李子くん。これなんてどう?」 「これ……ですか?」  夜参道に並び立つブティックのひとつに、僕らはいた。  今日は相良さんとお買い物。僕のことを着飾りたいという。やっぱり、自分の好みにするところが相良さんがDomなんだなあと再認識できるところだ。  あてがわれる布と自分を鏡で見る。この服はトップスというのだろうか。インナーに薄い空色の、くすんだタンクトップを着て、その上に胸のあたりまであるパーカーを羽織る作りらしい。 「ちょっとやんちゃに見えてかわいい」 「……そうですか」  似合うかどうか心配する僕を他所に、相良さんは満足そう。その後も、何着か相良さんがピックアップしたものを試着して見てもらった。結局、全部買ってもらってしまった。さっき、別のお店で6着も服を買ったのに……。このお店では11着も買ってしまった。 「じゃあ、着てみようか」  相良さんの家に戻り、早速服を着せられる。自分で着れるよと言いたいけれど、上機嫌な相良さんをへこませたくないから、言わない。  さっき試着したトップスに、アイボリーのカーゴパンツを合わせてくれた。なんか、ストリートにいる若者みたい。見慣れない自分の服装にどきどきしていると、もっとどきどきすることが起きた。

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