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第247話

「わっ」  背中から、思い切り強く抱きしめられる。思わず声が出てしまった。相良さんが僕の耳を舐めてくる。ぴちゃぴちゃと跳ねる音が鼓膜に響いた。  器用に僕の身体を反転させて、正面から迫ってくる相良さんの顔が。きれいだ。  その勢いのまま、床に座り込んでしまう。相良さんが僕の頭の周りを囲うようにして覆い被さる。 「っ」  相良さんの目。すごく、熱をもっているように見える。 「李子」  その隙間で、ほわ、と見える黒い影。 「いい?」 「はい」  これが、僕と彼の合図だ。 「う"っ」  呼吸が止まるぐらいの痛みが僕のおしりを襲う。  噛みつかれているから。相良さんに。相良さんの硬い歯に、肉を食まれているから。双丘の片方、左側のおしりに思い切り噛みつかれている。痛くて、痛くて、拷問にしか感じない。  けど、これで相良さんが喜んでくれるなら。満足してくれるなら、いいやって思ってしまう。少しくらいの痛みは我慢すればいい。ほんとうに無理だったら、セーフワードを言えばいいし。    何回目だっけ、こういうの。  僕は相良さんの悪癖について話を聞いたあとの関係を思い出す。  たしか、今日でこういった行為は5回目だ。初回はもっと優しく痛めつけるplayだった。せいぜい、僕の背中を軽く叩くとか。それでも、赤く跡はついていたけど。ちゃんと湿布を貼ってくれるくらい、かいがいしかった。  でも、2回目、3回目ともなると僕らは慣れてきてしまった。一種の習慣のようなものだ。相良さんはちゃんと「大丈夫?」と声かけをしてくれる。そのとき、僕は大丈夫じゃなくても「大丈夫です」と言ってしまった。それが、いけなかったのかもしれない。相良さんも慣れてきて。もう、僕を心配する声はない。今だってほら、無言でおしりに噛み付いている。

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