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第248話
「っ……」
僕は、あまりの痛みに後ろを振り向いてしまう。そうしたら、目が合ったんだ。相良さんの目、こんなに鋭かったかな。肉食動物みたいに興奮した目が僕を射抜く。心臓が震えた。
求められている。
その事実がたまらなく嬉しいはずなのに、どこか怖さも感じてしまう。
僕がふるふると首を横に振ると、相良さんはようやく歯を離してくれた。大丈夫。血は出てない。ただ、赤黒い跡がついただけだ。
「痛かったね。よく、我慢できたね」
相良さんは僕の身体についた跡を指先で柔くなぞる。その手つきが優しい。いつもいつも、彼は僕の傷を撫でてくれる。労わるように。早く治りますようにと願うように。
矛盾している。あまりにも。
彼の考えは僕には少し理解できない。
愛しているから傷つけてしまうのだと。
僕だったら。愛しているなら、傷つけたりなんかしない。一生やさしくする。
でもそれが相良さんの愛し方なら、僕はそれを受け入れたい。この人に毒があるとするならば、解毒をしなければならない。それは、mateである僕の役目だ。
この人の狂気を受け止められるのは僕しかいない。
そんなふうに考えるまで、僕は墜ちてしまった。相良さんが堕ちていく場所まで、おそろいみたいにして。
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