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第251話

 すかさず、怖くなって相良さんの肩に手を回す。  頭、働かなくて。ふわふわ、とろとろしてて。キス、したいな。  僕は相良さんの唇に自分から口を合わせた。相良さんはそんな僕を優しく抱きしめてくれていた。  ちうちうと、吸い付くだけのキスをしていたけど、それじゃあ足りないと思って僕は相良の唇を舌でノックする。軽く目を見開いてから、相良さんは口を開けた。 「っは……う」  僕の喘ぎ声。その後にじゅ、じゅ、と僕が相良さんの舌を吸う音だけが部屋に落ちる。唾液がとまんない。気持ち、いい。ずっとちゅうしていたい。寝ぼけてるみたい。すっごく幸せな夢を見たあとの寝起きみたいな多幸感。  相良さんはそんな僕の背中を優しく撫でながら、僕の両脇に手を差し入れた。  あ、唇離れちゃった。  残念だ。そう思いながら彼を軽く睨む。どうしてキスさせてくれないの? そんな不満な目をしていると自覚している。変だな。僕はこんなことめったにしないのに。こんなに、わがままな子じゃないのに。 「李子。ちょっと落ち着こうね」  僕のことを背中から抱きしめてくれる相良さんの言葉が耳に入る。僕は今すぐにでもキスしたいし、なんなら2回戦だってしたい。なのに、相良さんはそれを許してはくれない。いつもなら、きっと喜んでくれるのに。どうして?

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