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第252話

 僕が物足りなさそうな顔をしていることに気づいたんだろう。彼は苦笑する。 「李子。そんな顔されても、今はだめ」 「じゃあ、今じゃなきゃいいんですか?」  すかさず反撃する。すると相良さんは、はあと大きな溜息をついてから髪をかきあげた。オールバックみたいな、普段見慣れない髪型を見るだけで僕の身体は火照った。 「李子は今Sub space中だから、まずは興奮状態を落ち着かせないと」 「さぶ、すぺーす?」  聞き慣れない言葉だ。首を傾げていると、相良さんがゆっくりと説明してくれる。その、よく通る低い声で。 「そう。Sub spaceっていうのは、Subがplay中やお仕置中に陥る多幸感状態のことをいうんだよ。例えるなら、眠剤飲んでふわふわしちゃう状態かな」  なんか、相良さん説明しながら嬉しそう? 笑いじわがよく見える。 「だから、たぶん李子くんは今すっごく気持ちよくていろんなことしたくなっちゃうと思うけど、まずは落ち着こう? 意識飛んじゃったりしたら危ないからね」  そう言うととんとん、と背中を撫でてくれる。そっか、僕相良さんのことが大好きだからこういう反応になるんだ。 「じゃあ、優希さん。僕のことぎゅうしてください」  笑いを堪えながら相良さんは 「いいよ」  そう言ってくれた。

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