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第253話

 相良さんの腕の中で抱きしめてもらい、だんだんと頭が覚醒してきた。朝起きて顔を洗ったときの爽快感のようなものを感じる。そう思ったら、先程までの自分の甘えたな行為を思い出してしまい1人で恥ずかしくなる。 「なんでそんなにかわいいことするかな」 「え?」  ぽつ、と洩らした相良さんの言葉を耳が拾う。反射的に聞き返していた。 「Sub spaceになってくれるなんて、Domにとってはご褒美みたいなものなんだよ。俺にとっては、最上の幸せだよ」  首を傾けながら相良さんが僕の目を見てくれる。黒く、透き通った瞳。相良さんが喜んでくれるのなら、もっと嬉しい。僕はもう、おしりの痛みのことなど忘れて相良さんに寄りかかる。 「李子くんのこういうところ、好き」 「?」  きょとんとしていると、相良さんは微笑んでくれる。 「こうして俺に甘えてるところ、誰にも見せたくない」  その言葉、反則です。僕は舞い上がってしまいそうな心を、どうどうと落ち着かせて軽く頷いた。 「そうだ。李子くん。来週なんだけど、俺出張で名古屋に行くから会えなくなるんだ。次に会うのは再来週なんだけど、いい?」 「……大丈夫です」  嘘。ほんとは来週も会いたい。会えるなら毎日だって会いたい。ここのところ、毎週会っていたから。会えなくても僕は我慢できるかな?

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