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第254話

「行かないでって顔にかいてあるね」  苦笑しつつ、相良さんが僕を見る。その目がやさしい。 「でもごめん。俺も仕事そっちのけで李子くんに会いたいけど、仕事も好きだから。どっちも好きだからどっちも欲しい。だから、待っててくれる?」 「わかりました。待ってます」  そうだよね。相良さんはあのミラコッタに勤めてるんだもの。仕事も大切だよね。仕事もプライベートも両方大切。そしてなによりも嬉しかったこと。それは相良さんが仕事そっちのけで僕に会いたいと言ってくれたこと。この言葉だけで一週間は我慢できる。 「その間に、これ渡しておくね」 「なんですか?」  相良さんは黒い紙袋を手渡してくれた。 「俺のこと思い出しちゃって、辛くなったときに開けてみて。李子くんのお助けアイテム」 「ありがとうございますっ」  こんなところまで至れり尽くせりだ。僕は再度、相良さんの胸に顔を埋める。胸板が厚くてお腹なんて腹筋がぽこぽこしててすごい。 「じゃあ、来週の分まで李子チャージしようかな」 「へ?」  ころん、とベッドに寝転がされて。相良さんの顔が近くにあって、僕の首筋に顔を埋めてきた。僕の身体の上に乗り上げてるけど、押しつぶさないようにとベッドに膝を立ててくれている。 「明日仕事お休みでよかったね」 「は、い……」  不敵な笑みを浮かべる相良さんを見ていた。ああ、だめだ。好きすぎて今日死んじゃうかもしれない。

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