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第259話
「はは。ごめん、俺もイっちゃった」
照れ隠しなのか、相良さんの笑い声が軽い。僕も苦笑しながら返事をする。
「ごめんなさい。僕もイっちゃって……」
「いいよ。どう? 気持ちよかった?」
「はい。すごく……あ、の。変なこと聞くかもしれないですけど」
「うん」
勇気を出して聞いてみる。
「相良さんも僕の中に入れるとき、こんな感じで気持ちいいですか?」
「……」
電話向こうの彼が黙る。沈黙が数秒。
「李子くんのほうが気持ちいいよ」
「……っ」
掠れた声で僕の名前を呼んで、言うから。僕は赤面して、さらに足の間に熱が集まってしまう。好きな人に気持ちいいよと言われるなんて、ご褒美以外のなにものでもない。
「……ダメだな。今すぐにでも李子くんのこと押し倒したい」
「……僕も、今すぐ相良さんのこと押し倒したいです」
「ぶっ」と彼が吹き出したのを聞いて安堵する。同じ気持ちなんだ。
「それ、ずるいよ。……あー、ごめん。上司から呼び出し。また今度電話するから。お助けアイテム上手に使ってね」
「はい。わかりました。優希さん……お仕事無理せず頑張ってください」
「うん。ありがとう。李子くんも仕事無理しないでね」
相良さんが電話を切る。僕もおもちゃの跡片付けをしてベッドに横になった。電話を切ったあとで、もう一度おもちゃを使ったことは内緒にして。
あかちゃんあざらしのぬいぐるみを抱いて、眠りについた。
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