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第260話 君に光る

「会いたかった」  むぎゅーっと、音が聞こえるくらいに相良さんに抱きしめられる。玄関先で、着ていたコートもマフラーも外さないまま。僕もその背中を抱きしめ返す。会いたかった。2週間ずっと我慢してた。本人を目の前にしたら抑えがきかなくって。相良さんが帰ってくる日の夕方に、仕事を終えてから寄った。合鍵を作ってもらっていたから、いつでも相良さんの家に入れる。 「んー。李子くんの匂い、落ち着くなあ」  2人で入るお風呂の中。僕の耳の後ろあたりをすんすんかぎながら相良さんが言葉を落とす。僕は臭くないかなと心配になる。  後ろから抱きしめられて、その手が僕の胸の飾りに触れた。 「ここ、自分で弄ったでしょ」 「あっ……え、なんで……」 「見たらわかるよ。ぷっくりしすぎ」  よく見てるなぁ。そうなのだ。僕は相良さんに会えない間、自分の身体に触れてなんとか耐えてきた。相良さんが触れてくれるみたいにいろんなところを触ってみた。 「好きだよー」  耳元に甘噛みしながら相良さんは歌うように気持ちを伝えてくれる。なんだかすごく機嫌がいいみたい。僕はそんな相良さんの雰囲気が好きで一緒に微睡んでいた。  お風呂を上がって服を2人で着せ合いっこして、夜ご飯を食べたあと。  いつものように寝室に向かうと、なぜかアロマキャンドルがいくつも焚かれていた。なんか、花束みたいないい匂い。相良さんの匂いだ。 「李子、こっちに座って。目を閉じて」

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