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第261話

 背後から相良さんの声。僕は指示通りベッドの端に腰掛けて目を閉じた。相良さんの手が僕の首を撫でる。くすぐったくて身を捩る。  次の瞬間、ぽろりと何かが自分の中でこぼれ落ちた。 「目、開けてごらん」  相良さんのベッドに座っていた。正面に、僕の顔がうつる。薄暗い部屋の中で、それは光り輝いているように見えた。 「どうかな?」  相良さんはスマホを自撮りに設定して僕の顔をうつしてくれる。  僕の首には、透明な色のCollarがついていた。小指くらいの太さの、細くて。透明で。僕の首筋を透けていく。 「っ……ひ」  顔、きっとくしゃくしゃだ。嗚咽を上げて泣く僕を相良さんは背中を撫でて見守ってくれる。 「ごめん、デザイン嫌だったかな?」  彼は別のことを想像したらしい。 「違いますっ。すごく、嬉しくて……」  ほっと安心したのか、相良さんも微笑を浮かべた。 「透明は誰とも喧嘩しないから。李子にぴったりだと思って。何色にも染まらない。ただ、俺の色だけに染まる李子でいてほしいから」  相良さんは僕の手の甲に恭しく口付けを落とす。僕はそのとき初めてこれが現実なのだと理解した。 「せっかくだから、写真でも撮らない?」  部屋の照明を付けて、相良さんが提案する。僕は「もちろん」と頷き相良さんの傍に駆け寄った。

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