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第262話

「はい、mate《めいと》」  カシャ。相良さんと僕。2人で微笑んだ写真。それに満足していたら、急に顎を持ち上げられて、キス。カシャ。カメラの音。もう、相良さんのスマホはどこかに消えてしまった。僕と、相良さんだけの吐息が響く。耳に、身体に、奥深くに。  その日は、この世で1番幸福なんじゃないかって気がした。今日の相良さんは、痛みを伴うplayをしなかった。ただ、ひたすら僕を愛してくれた。  耳筋にキスをして、おでこにキスをして、頬にキスをして。キスばかりしてくれた。そんなことをされたら、僕の体はすぐに熱を持ってしまう。それも、丁寧に触れてくれた。 「優希さ……ん」  彼の腕の中。与えられる熱に、刺激に溺れそうになりながら名前を呼ぶ。愛おしくてたまらない人の吐息を聞きながら。 「……李子」  彼の瞳に溺れそうだ。彼の色に染まるなら、きっと僕は黒色になるんだろう。澄みきった、黒に。  Collerを撫でながら彼が囁いてくれる愛の言葉に、やさしい触れ方に。  僕はわすれてしまっていたんだ。  相良優希という人間が、どういう人なのか。  そして、彼の色に染まるという言葉の意味をこのときはまだ理解できなかったんだ。  それでも、この温もりに触れられるなら。一時でも、心が浮かぶなら。緩むなら。それでいいと。たとえこの先どうなっても、あなたと歩むよ。  僕はあなたのSubだから。  そうして、あなたは僕だけのDomだから。 僕たちはこの世で最も幸福なmateなのだから。 【第2部 完】

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