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第264話

「ところでさ……」  僕は、おずおずとせつくんを見る。 「今日のせつくんの格好も、Dom様に決められたの?」  くるりとせつくんが振り返る。ストローから口を離さず、そのままもごもごと話し出す。 「服はDom様が選んでくれた」  肩で中途半端に羽織られた黒いパーカー。背中に蛍光色ピンクのカミナリマークがついてる。インナーには小さな穴がたくさん空いたタンクトップ。ほぼ裸に見えるのは僕の目が悪いから? ううん。透け透けだから、やっぱり解放的なファッションなんだ。ズボンは黄色いチェック柄。靴は黒いローファーだ。  1番驚いたところなんだけど。せつくんは、マッシュの髪の毛を女の子がやるハーフツインみたいにして縛ってる。 「髪型もせつくんの好みなの?」  と聞くと 「まっさかぁ」  と笑って、スマホの待受画面を指さす。そこには真顔のDom様がいた。真正面から自分をうつしているらしい。 「これ、Dom様が人生初の自撮りしたときのやつ。俺がお願いたたみかけて、実現したの」 「まじでかわよ」……と声を洩らすせつくん。 「今日はこの髪型で散歩してこいだって。鬼畜じゃんね、俺のDom様」 「そうなんだ」  せつくんのDom様は謎が多い人だから。その人が指示することなら、なんでも許せてしまう気がする。

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