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第265話

「あー。まじで暑い。てか、透夏は沖縄だっけ? あいつ暑いの無理だから干からびてるな、きっと」 「そうなんだ。……大変そうだね」  透夏くんは、早めの夏休みということで仁さんと沖縄旅行に行っている。せつくんはそれを聞いた瞬間、お土産のリストを透夏くんに送っていた。さすがせつくん。仕事が早い。 「っうかさあ。りこちはもうCollarありちゃん生活に慣れてるしィ。で、どうなのよ。チョーシは?」  相良さんとのmate生活のことを聞かれているんだろう。僕は素直に話すことにした。 「会う度優しくしてくれて嬉しいよ。相良さんの行きつけのバーとかホテルに連れて行ってくれるし。この前は、海に連れていってくれた。一緒にサーフィンしようって言われたんだけど、僕初めてだし全然出来なかったから、相良さんが波に乗ってるのを見てただけ」 「夏らしいことしてんねー」  プラスチックの底にたまったタピオカをせつくんが一生懸命吸おうとしている。ズズズっとすごい音が出た。 「せつくんは?」  そう聞くと、せつくんは難しく眉を寄せる。 「んー。ちょい倦怠期的な? 俺のDom様、機嫌の良し悪しが激しいからさあ。ときどき甘いし、ときどき手厳しいし。ほら」  せつくんが、パーカーを着ている肘のあたりをめくって見せてくる。 「新しいの入れられちゃった」  そこには、バーコード型のタトューが入れられていた。 「この番号、何?」  せつくんにそう問いかけると、彼は笑う。 「俺の誕生日。生まれたことをおじいちゃんになっても忘れないようにだって。記憶曖昧になっても肘見ればすぐわかるだろって、Dom様が」 「へえ」  やっぱり、せつくんのDom様は独特な人だ。だからこそ、2人のバランスが取れてるんだろうけど。  その日はせつくんのタピオカミルクティーハシゴをして終わった。僕は1杯の半分しか飲めなかった。残りは家で飲もうと思う。せつくん、楽しそうだったな。僕と一緒にいて隣で笑ってくれる友達がいることのすごさを、ひしひしと感じてる。相良さんに出会ってから、僕は与えられてばかりだ。いつか恩返しがしたいな。

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