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第268話 ※

「李子。好きだよ」  相良さんに身体を横抱きにされて、耳元で囁かれる。僕はもう、それどころじゃなくて。ちかちかする頭を振り切って、快感の渦に沈んでいた。こんな体位は初めてだ。なんていう名前なんだろう。とにかく、すごい。相良さんが上手だからかな。相良さんに触れられて感じない日はなかった。 「っう……ぁ」  ずぷ、と彼のものが僕の中に穿たれた。細かく痙攣すると、僕の中にはあたたかいものが広がっていく。相良さんの体重が僕に乗っかった。押しつぶさないように、両腕でベッドを押さえてくれている。そのときにできる上腕二頭筋のぽっこりしたところが好き。僕はその腕を撫でていた。  しばらく呼吸を整えてから、相良さんが言う。落ち着いた、よく響く声で。 「……いい?」 「はい」  何の合図かは嫌ほど知っている。だから僕は自然と身構えてしまう。これから起きることを、想像してぞくりとした。 「look《俺を見て》」  僕は、寝そべったまま相良さんの目を見つめた。その瞳は、暗く、翳りを帯びている。獰猛な獣の片鱗が、瞳の奥に見えたような気がした。 「っ」  ぢゅ、と鎖骨のあたりを強く吸われる。ちくんとした痛みを与えると、彼は胸のまわりにも同じことをした。それは、上半身から下半身に移動していく。僕は相良さんの瞳から目が離せないから、自分の体に何が起きているのかわからない。でも、あたたかい痛みだということはわかった。

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