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第276話 ②
俺の天使は、いつもにこにこ笑っている。
遅めのお昼。
うどんの出前をとった。李子くんは、明太カルボナーラうどん。俺は、きつねうどん。
二人でローテーブルに向き合いながら、お互いのうどんをシェアする。俺がたくさん取っていいよと言ったのに、李子くんは1口くらいの量しか取らない。元々少食とは聞いていたけど。今日も、1人前は食べられないだろうから余った分は俺が食べることになるだろう。それが、不思議と嫌だとか手間だとかは思わない。
「どう? おいし?」
俺がそう尋ねる。すると、李子くんは「うんっ」て大きく頷いて、朝顔の花が開いたみたいに笑うから。持っていた箸を落としそうになった。
どうしてそんなに、君はいつも純粋なんだろう。
屈託のない、裏の意味のないだろう笑みは、俺をひどく安心させる。仕事で起きたトラブルとか、苛立ちとか、やるせなさとか。そんなの全部簡単に吹き飛んでしまう。
天使の笑顔を、いつまでも見ていたい。隣で。どこにも逃げないように。逃がさないように。俺だけの、天使でいてほしかった。
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