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第279話 ⑤

 李子くんのキスは日々上達の道を辿っている。  最初はさ。あんなに、ぷるぷる震えてキスを受けていたのにね。今では自分からキスをしてくれるようになった。今でも緊張してるのかぷるぷる震えてるけど。そこもかわいいからいっかって。俺は思ってる。  そんな今日は、いつもと様子の違う李子くん。何かを決心したような顔をして僕を見つめる。+俺の頬を両手で押さえて固定している。俺、動けないよ。  李子くんの顔が迫ってきた。正確には口が、だけど。大好きな君で目の前がいっぱいになるのはかなり良い。  ちう、とまずは唇に吸い付くだけのキス。少しずつ、角度を変えて。鼻で息をしてるのがわかる。俺が教えたもんね。上手。上手。  李子くんが唇をむにむに舌で触ってくる。口、開けって言ってるのかな。僕は静かに口元の力を緩めた。するりと入ってくる君の舌。  小さくて、ぬるい。ちまちま僕の舌を絡めて、離れて。それを繰り返してた。途端、じゅ、と舌先を吸われる。俺がよくやるから、真似してるのかな。  ふーっ、ふっーと、鼻で息を吸う音が聞こえる。李子くん必死だ。酸欠にならないかちょっと心配だけど。  あらかた満足したようで、李子くんが俺から顔を離した。  李子くんの頭をよしよしして、肩に手をのせる。 「満足した?」 「はい」  うんうんと頷く李子くん。この従順さがたまらない。 「じゃあ次は俺の番ね」 「っ」  あんぐりと口を開けた李子くんの顔がおもしろい。  しっかりキス2回戦を行って、俺が勝ちました。

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