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第280話 新天地シアトルでの新生活
青く高く澄み切った空に入道雲がもくもくとわいている。マンションのバルコニーで読書をしていた僕は陽の眩しさに思わず目を細めた。ここでは日本より陽の紫外線や光の眩しさを強く感じる。読んでいた心理学の専門書に栞を挟む。ハンバーガーのように分厚い本は、シアトルに来てから読み始めてもう半分近くまで読み進めることができた。ゆっくりと息を吸い込み大きく伸びをした。
僕はここシアトルにある高層タワーマンションの一室で相良さんと一緒に暮らしている。12畳の広々とした開放的なリビングが僕のお気に入りだ。前の相良さんの部屋も広かったけれど、この部屋のほうがもっと広い。
キッチンに立ち、相良さんが選んでくれた青いエプロンを巻いてマカロニを茹でる。時刻は夕方の16時。夕ご飯の支度にとりかかる。別の鍋でゆで卵を4個作る。カウンターキッチンはアメリカらしく広くて機能性も高い。僕の料理スキルも日本にいた頃より少しは上がっていると錯覚してしまうほどにプロ仕様なのだ。鍋を沸騰させている間にソースを作る。ボウルにマヨネーズ大さじ5とレモン汁を小さじ2、おろしにんにくを大さじ2入れて混ぜ合わせる。マヨネーズの油分が分離して液体っぽくなったところで泡立てるのをやめた。マカロニをザルに入れて水気を十分に切る。ゆで卵の殻を丁寧に剥いていきソースを作ったボウルに入れる。鍋を洗い終えてから今度はフライパンで角切りにしたベーコンをオリーブオイルをひいてから火をかける。じゅうじゅうと肉汁が出てきたら、炭にならない程度に焦げ目を付ける。マカロニとゆで卵を静かに混ぜ合わせ、ソースが絡んだところにカリカリになったベーコンを入れる。軽く馴染ませてからサラダ皿に盛り付けた。1口味見をする。
「……うん。いい感じ」
僕はマカロニサラダを今日の献立に入れていた。あとは相良さんが帰ってくるまでに下味を付けてあるガーリックチキンをオーブンで焼くだけだ。相良さんどんな反応するかな。僕はシアトルに来てからというもの、相良さんに料理を振る舞うのが趣味のひとつになっていて毎日レシピを調べては慣れない英語を使ってスーパーで買い物をする日々を送っていた。
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