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第282話 アメリカスタイルの相良さんにきゅん
シャワーを浴び終えた相良さんが腰にバスタオルを巻いただけの姿でリビングに現れた。僕はつい見慣れているはずの裸なのに目を泳がせてしまう。キッチンでホットミルクを飲んで落ち着こうとマグカップに口をつけた瞬間、目の前に逞しい胸筋が顔を出したので思わずむせてしまう。ぶしゅ、とはしたない音が僕の口元から溢れる。口に含んでいたホットミルクが相良さんの胸に飛び散ってしまった。白い液体がつうーっと腰に向かって垂れていく。
「ご、ごめんなさいっ」
咳き込みながら慌てて傍にあったキッチンペーパーで相良さんの胸を拭く。相良さんは特段怒らずに僕の慌てふためく姿を見て楽しんでいる様子だった。
最近の相良さんは以前にも増して時々僕のことをからかうようになった。アメリカの暮らしというか文化なのか、肌を露出させることに羞恥がないらしい。相良さんの身体は元々筋肉質で引き締まっていたが、シアトルに来てからというもの空いている8畳ほどの部屋をトレーニングルームに改造したため筋トレの頻度が増している。よって胸筋や腹筋の発達が素人目の僕から見ても著しい。まるで彫刻のように美しい肢体を日々見せつけられていては、気が変になってしまいそうだ。
「ふっ、服着てください。風邪引いちゃいますから……!」
相良さんと目も合わせられずにしどろもどろになって伝えると
「わかったよ。心配してくれてありがとう。びっくりさせちゃってごめんね」
とすぐに服を着用してきて、素直に言うことを聞いてくれた。なんだろう。鍛えた身体を見せたかったのかな……。あえて僕に「服着てください」って言って欲しかったのかな。なんか新婚さんみたいで嬉しいけど気恥しいよ。
2人で丸テーブルを囲む。この時間がたまらなく幸せだ。
「すごい美味しそう」
「へへ。今日はアメリカの家庭料理にしてみました」
相良さんの反応が良くて僕は内心ガッツポーズをとる。
「いただきます」
きちんと両手を合わせてから僕の作った料理を口に運ぶ相良さんを見て、どんな反応をするのか気になって仕方がない。マカロニサラダを1口含んだのを見て僕はうずうずとテーブルの下で両手をグーパーする。
「さっぱりしてていいね。これはレモン汁が入ってるのかな? マヨネーズが主役だけど爽やかで食べやすいよ」
あまりに鋭い料理への感想をもらえて僕の表情はぱぁっと明るくなる。1口食べただけで調味料まで当ててしまう相良さんはやっぱりすごい。料理が得意な人だからわかっちゃうんだろうなあ。
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