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第86話
残された好弥は荷物をドアの傍に運んだり…手持ち無沙汰感が半端ない
「なぁ 好弥 本当有り難うな
いてくれて嬉しかったよ」
「友だちなんだから当たり前だよ」
「友だちかぁ そうだな 大事な友だちなんだけと…俺らでも…だけなぁ」
「えっ 新…し 新 いつもの新じゃないよ…ど…どう…した?やっぱり病気で
気が弱くなったかな?」
「俺もよくわからんのよ
でもお前がいるとほっとするっぅか」
「どうしよう…どうしよう…優しい言葉は 辛いんだ また泣いちゃうから 男なのにみっともない」
「好弥…こっち来てくれ」
今まで落ち着きなく体を揺らしていた
富永が一瞬固まり遠慮がちに近寄って来ると
矢沢は富永の手を握りしめた
「これは昨夜のお返しだ」
「部活もあるから我が儘言えねえけど 明日も来てくれたら嬉しいよ」
富永は握りしめた手を胸に当てて
泣き出した
「俺…新が…好…きなん…ごめんな」
「判ってる 何となく …かなって感じていたけど
さっき圭吾と話して見えてきたよ」
「好弥と俺の関係が
お前は俺の特別なんだって」
「あぁ息が苦しいかも
えぇっと有り難うって言って良いのかな」
「お礼は要らないよな
これからもよろしくお願いします
だよな」
「うん」
俯く富永が無性に愛しく思えた
「ゆっくりゆっくりだな俺たちは」
矢沢の言葉にまた泣き出した富永を
引き寄せ涙をふいてる病人矢沢だった
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