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第168話

外は三十度を超えていたが 冷房で冷えた体にはちょうどよい暑さだ 木陰にあるベンチも一時半では 誰も座っていなかった サワサワと葉ずれの音か 心地良く耳に響く 昼寝には持って来いだわ~ 二つのベンチは 石のテーブルを挟んでいる 「熱いから気をつけて!」 テーブルを触って大袈裟に熱がり 俺の頰に指を押し付ける 「熱い!!!! やけどするよ!」 富永はケラケラ笑っているが 矢沢は呆れ顔で 「バカな事をやってんなよ~ それより飯だ~」  早々に座ったベンチは予想以上に熱く 短パンで来た矢沢はマジでに飛び上がっていた 夏の日差し舐めてはいけません! 先輩! おにぎり サンドイッチを 山のように持ってきたが あっという間にそれぞれの胃袋に収まり ひとつも残らなかったら 麦茶美味い! 富永がやけに大人しい あらら~おにぎり持ったまま テーブルにうつ伏せて寝てるよ 矢沢がおにぎりを取り上げ 富永の頭を膝に乗せ 俺が足をベンチに乗せる デカいとなかなか大変だ! スヤスヤ寝ている富永の背中を トントンしている矢沢も 船を漕ぎ始めた テーブルを片付け始めた砂川を 膝に座らせ横抱きして キスをすると 「ここ図書館ですよ~反則行為ですよ~ 罰として もう一度しなさい~」 なんだ?可愛いんですけど 深いキスを何度もしたあと 俺は話し始めた 「優 俺はふたりのこの付き合いを誰にも文句は言わせない  それには 自分はもっと頑張る まず 勉強だ!学年で十番以内入る 優も矢沢もライバルだ! そして 大学も仕事も優と生きていくために より良い選択をしたいんだよ 優との人生を大切に 生きたいと思っている  大人は先回りする 話ししてくるけどね しっかり受け止めて 自分たちの活きる道を見つける 絵空事にきこえるよ そうだよ~絵空事なんだから でも 絵空事も実現すれば  現実だからさ それが 俺の今の精一杯の覚悟 昨日の答えになってるか?」 砂川首に巻き付いていた腕が更に深く絡みついて 唇を貪られた 「圭吾 嬉しい答え有難う~ 俺も同じ ふたりの事をとやかく言われるのは絶対嫌だ ただ同性同士に嫌悪感を持つ人も実際いる だから 人間関係を今まで以上に大切にして行きたいって思うんだ まずは学校生活だよ 俺たちを見て好きな人欲しいなんて 思ってくれたら嬉しいよね」 俺たち四人は わざわざばらす必要は無いけど 隠す事もしないって話し合っていた 隠すとろくな事が起きないし だいたい砂川優が恋人だって事を 隠す意味がわからん それは矢沢たちも同じ 自然体でいれば良いって…難しいけどね

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