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9 はじめての目合い
「ボウズ、一度始めたらもう止められないぞ」
隠神 さんの声に耳がくすぐったくなる。思わず首をすくめてしまったけど、これからのことを怖いとは思わなかった。そもそも、どういうことをするのかよくわからないから怖がることなんてできない。
「大丈夫です。ぼく、頑丈だし」
「そういうことじゃあないんだが……。いや、丈夫なのはいいことだ。しかし……、思った以上に小せぇな」
ベッドの上にころんと転がったぼくは素っ裸だ。そんなぼくを、やっぱり裸になった隠神 さんがじっと見ている。お面だからはっきり見えるわけじゃないけど、目がギラギラしているように見えた。
ぼくに覆い被さっている隠神 さんは、やっぱりというかすごく大きかった。ぼくの頭の両脇についている腕も筋肉ムキムキですごい。さっき見た足もムキムキで、こういう体をマッチョ系って言うんだとため息が出そうだ。
それに……隠神 さんのあそこもすごく大きかった。いつも行く銭湯で見たどんな男の人のよりも大きい。それに、その奥にぶら下がっていたものもすごく大きくて、思わず二度見してしまったくらいだ。
「小さくても、大丈夫です」
隠神 さんはまだ、ぼくの体の小ささを気にしている。そりゃあこんなにあちこちが大きな隠神 さんから見たら、ぼくなんてすごく小さく見えるだろう。それでもぼくは、隠神 さんとしたい。
じっと見つめていたら、また隠神 さんが「フゥゥ」と大きく息を吐いた。そのたびにお面についている赤いフサフサが揺れる。
「知らないのかもしれんが……ボウズのここに、オレの逸物を挿れるんだぞ?」
「ひゃっ!?」
「男同士の目合 いは、ここで繋がるんだ。十分にほぐしはするが、あー、なんだ、オレの逸物はボウズの体には随分と大きい。もちろん痛くないようにするが、最初は苦しいはずだ」
「ぅひゃっ!?」
そんなことを言いながら、隠神 さんの指がぼくのお尻の穴をグリグリ触り出した。ぼくは初めてそこに隠神 さんのを入れるんだって知った。
(そこに入れるって……えぇ? ええぇぇ!?)
する気満々だったぼくも、さすがに驚いた。だって隠神 さんが触っているところはお尻の穴で、そんなところにあんな大きなものが入るとは思えなかったからだ。あんな大きなものが入ったら、それこそ穴が裂けるんじゃないかと思って怖くなる。
そんなことを思ったぼくは、きっと顔を引きつらせていたに違いない。
「…………やはり、やめておくか?」
隠神 さんの小さな声が聞こえてきた。気のせいでなければ、少ししょんぼりしているようにも聞こえる。
「オレは気が長い。せっかくボウズが縁付きしてもいいと覚悟してくれたんだ、オレはいつまでだって待つぞ」
待つっていうのは本当なんだろうけど、本心じゃないと思った。だって、ぼくの足に隠神 さんの大きなアレが何度も当たるんだ。熱くてガチガチに感じるってことは、そういう状態になっているってことだ。ぼくだって男だから、そういう状態がつらいことくらいわかる。
「ぼくは頑丈だし、平気です」
「ボウズ」
「……ちょっとびっくりしただけで、大丈夫です」
「しかしな……」
「ぼく、こういうことしたことなくて全然わからないけど、でも、できます」
「いや、そういうことじゃあなくて、」
「ぼくだって……! ぼくだって、隠神 さんとそういうこと、したいと思ってるんです!」
ここまできて止めようと思っているような隠神 さんの態度に、ちょっとだけ腹が立ってきた。
ぼくが小さいってだけで隠神 さんが我慢するなんて嫌だ。そりゃあぼくは小さいし、やっぱり子どもに見えるのかもしれない。でも、ぼくは隠神 さんと結婚して奥さんになるんだ。こういうこともすることになるんだろうし、じゃあいまやってもいいじゃないか。
(それに、ぼくだってもうすぐ十八になる。もう大人と同じなんだから)
「ぼく、待てません」
隠神 さんが、また「ググゥ」と唸った。ここまで言っても駄目なのかと思っていたら、ガツンってぶつかるみたいなキスをされた。
「さっきも言ったが、一度始めたら止まれないぞ? ボウズがいくら嫌だ、やめてくれと泣いても、最後まで止められないからな?」
低くなった隠神 さんの声が、ぼくの耳をゾワゾワさせる。それだけで興奮してきた。
「ぼく、頑丈だから大丈です」
言い終わらないうちに、今度はムチュッてくっつくようなキスをされた。
ヌチョヌチョする液体をたくさんつけられたぼくのお尻の穴からは、ずっとグチュグチュした音が聞こえている。隠神 さんが指を三本入れたって言ったけど、ちょっと苦しいくらいで痛くはなかった。
それよりも、指でお尻の中をいじられるとビリビリすることがあって、そっちのほうが気になった。ビリビリするとなんだか気持ちがいい気がしてきて、ぼくのアレまでビリビリしてくる。初めて感じるビリビリに、ぼくの体はどうなっているんだろうとよくわからなくなってきた。
「ボウズ、挿れるぞ」
隠神 さんがチュッて何度目かのキスをして、軽く抱きしめてくれた。まるで包み込まれているみたいな感じがして、勝手に口から「ほぅ」ってため息みたいな息が漏れる。そうして力が抜けたところで、お尻から指が抜けていくのがわかった。
(ってことは、今度は……)
大きなアレを入れられるんだ……そう思ったら、やっぱり緊張してきた。怖くないと言ったけど、いざそのときが来るとやっぱり少しだけ怖い。でも、ここでやめたいとは思わなかった。
(隠神 さんと、したいから……)
ぼくはしがみつくように隠神 さんに抱きついた。両足を大きく開かれているから苦しかったけど、ぎゅうぎゅうに抱きついた。
(あ……)
お尻に、ヌチュって硬いものがくっつくのがわかった。それがググッと穴を広げて……ヌププって変な音を立てながら、中に入ってくる。
「ふ、あぅ……っ!」
思わず声が出てしまったのは痛かったからじゃない。よくわからない衝撃の条件反射で出ていたんだ。
ズブブって感じで奥に大きいのが入り込んでくるだけで、お尻もお腹も苦しくなる。きっと信じられないくらいに穴も広がっているはずだ。想像すると怖いけど、苦しいだけで痛くはない。
「……はっ、よぅし、太いところは入った。ボウズ、大丈夫か?」
「はひ、らい、じょうぶ、」
「……すまんな。あと少しの辛抱だ。さすがに全部は挿れないが、半分はな……っと、ははっ、こりゃすごいな。ボウズの中はとんでもない、ぞ……っと」
「~~~~……っ!?」
限界まで広がった穴を、ズルンって感じで太いものが勢いよく通り抜けた。それがゴチュン! って感じでどこかにぶつかったせいで、一瞬息が詰まる。
「ボウズ、大丈夫か? 息してるか?」
「は、はひ……、」
「あぁ……ボウズの中は、こりゃ極楽浄土だなぁ……」
「ひっ、ふあっ!?」
「……いかん、辛抱しようとしているんだが、腰が勝手に動いてしまう。あぁ……、駄目だ、こりゃ辛抱なんぞ最初から無理だったってことだ」
「ひ、ひうっ!? ひゃ、うあ、あ、あ!」
お尻の中を太いものがズルンズルンって感じて動き出した。そのたびに何度も硬いものがゴチュゴチュ奥にぶつかって、それが苦しくて目が回りそうになる。ゴチュゴチュ、ブチュ、トントン、ゴチュ、ドチュ、そんな感じで苦しいところを何度も叩かれる。
苦しくて苦しくてたまらないはずのに、ぼくの体は少しずつ変な感じになっていた。
ドチュンと奥を叩かれると、頭がビィィィンと痺れて腰がビクビク震える。ズルンと太いものが抜けるとゾクゾクして、またズルンと入ってくるとゾワゾワする。
そしてドチュドチュ奥を叩かれて、今度は全身が痺れたみたいにビィィィンとしてブルブル震えた。
「ふ、……っ。ボウズも、いいみたい、だな。こんな小せぇ体じゃあ壊しちまうかもと心配したんだが……。これなら、すぐにでも全部、入りそうな具合だ」
「ふ、あ、あ、あぅ!」
「オレのは全体的にでかいからなぁ、最初は少しばかり苦しいだろうが……。くっ、一度受け入れてしまえば、ふっ、ボウズも、とんでもない極楽浄土に、いける、からな……ッ」
「ひ、ひい、いっ! や、やらぁ、も、おくは、むり、やら、やらって、えぇ……!」
いままでドチュドチュ叩いていた奥より、もっと奥に何かが入ろうとしている。それが怖くて、隠神 さんにしがみつきながら「無理、無理」って何度も叫んだ。
「言っただろう、止まれないぞ、とな……ッ!」
「や・らぁ……!!」
お腹のどこかが破れたのかと思った。内臓がぐちゃぐちゃになったような気がして、怖くて必死に隠神 さんにしがみついた。肩か腕かに爪を立てて、泣きながら嫌だって頭を何度も振った。
(怖い、これ以上は怖いからやめて……!)
「ひ……!?」
急に体の中でゾクゾクしたものを感じた。ゾクンとする何かが足の先から頭のてっぺんまで走った。
(なに……なにが……)
何が起きたのかわからなくて目を開いた。一瞬、体の外側も内側も何も感じなくなったような気がした。何もかもがスッと消えたかと思った瞬間、今度はお腹の中が燃えるみたいに熱くなって驚いた。全身がガチガチに固まり、足の指先までギュッと丸まる。
「……ふふ、ふはは、まさか最初から全部入るとはな……。ボウズ、おまえは間違いなくオレの伴侶になるための存在だ。おう、そうぎゅうぎゅうに足を絡めるな。これでは満足に動けんぞ?」
「あ、あう、う!」
「そぉれ、奥は気持ちがいいだろう? ……あぁ、やはりもっと食わせないとなぁ。腹がオレのもので少しばかり膨らんでしまっている。これでは目合 い続けるのは厳しいぞ?」
「うあ、あ、あ……!」
「虚ろに蕩けた顔も愛 いなぁ。小さい体も幼妻だと思えば悪くない。それに……、こちらはずっぽりと根本まで咥え込んで、ほぅれ、最初の子種だ」
ググッと硬いものを押し込まれた。もう入らないと思っていたのに、もっと奥に硬いものが入っていく。
(奥……あつい……)
奥のほうに熱い何かがあふれ出した。硬いものが少し動くだけで、グチュグチュヌチュヌチュすごい音がする。何があふれているのかわからないけど、これは気持ちがいい気がする……。
ぼんやりとそんなことを思っていたら、お腹の中をズルズルと太いものが動き始めたのがわかった。あ、駄目だ、太いのが抜けると何かが、出てくる……っ。
「あ、やら、もれ、ちゃう……」
「気にするな。ボウズの体じゃあ全部飲み込むのは難しいだろう。それ、また思う存分注ぎ込んでやるからな?」
「やらぁ……。も、おなか、いっぱい……。また、もれちゃ、う……」
「おっと、たった一度きりで腹が少しばかり膨れてしまったか。やはりもっと大きくなれ。いや、オレの子種で膨れた腹というのも悪くはないか。そうだな、狸囃子の子狸のような腹というのも愛 いかもしれんなぁ」
もうお腹いっぱいだって言っているのに、また太いのがお尻の中に入ってきた。トロトロ隙間から何か漏れているのが気持ち悪いのに、隠神 さんはずっと笑っている。
笑っている隠神 さんのお面を見たことまでは覚えているけど、その後ぼくがどうなったのかはよくわからなかった。
こうしてぼくは、隠神 さんとセックスをした。
ぼくが「あのこ」のことを気にしていたからか、何度も「ボウズは誰の代わりでもない」とか「ボウズだけだ」とか、そんなことをたくさん言われたのは覚えている。
その言葉を思い出すたびに、ぼくの顔はだらしなくなる。前に見たドラマで、こういう顔を「だらしない」って言っていたけど……鏡で見たら、本当にそういう感じで驚いた。
ぼくが次の日に目が覚めたとき、どうしてか部屋に草凪さんがいた。いつもどおりに眼鏡をキリッとさせて隠神 さんを叱っている。少し背中を丸めて草凪さんの話を聞いている隠神 さんを見たら、やっぱりお母さんに怒られているお父さんみたいだなぁなんて思って笑ってしまった。
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