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第二話 この愛に隔てなど無い 1
ミイラ男
「捕まえられそう?」
ドラキュラ
「そう遠くには行ってない。」
クリス達には見えぬ何かを追って小走りにジグザグと進むジョシュアの後に続く三人。すると急にジョシュアが足を止め、他の者にも止まるよう手で合図をした。森の中の木々に身を隠し、ジョシュアが警戒する方向を覗くとそこには一人の女の子がクリスの財布の紐を解き中身を勘定している。
「どうやって近付こう………」クリスがそう考えていると、ジョシュアがガサガサっと大きな音を立て立ち上がった。そして隠れもせずに堂々と女の子に向かって歩いて行く。瞬時に女の子に視線を戻すと、あろうことか女の子は先程の体勢のまま時が止まったように固まっている。
ミイラ男
「どういうこと??」
女の子の手から財布を取り上げ、口を閉めるとクリスに向けて財布を投げた。その財布を受け取ったクリスが女の子の元に駆け寄り、その子の目の前で手を振るが何の反応も無く、一点を見つめたままの状態で固まっている。ジョシュアが自らのズボンのベルトをスルスル……っと外し、女の子の両手を縛った。そんな彼の赤い目が元の色に戻ったと同時に女の子が動き出し、状況がつかめずに慌てて騒ぎ出した。
「放せぇぇぇぇええ!!」
ドラキュラ
「黙れこのチビ助!盗っ人め!!」
「変態がぁぁぁああ!!」
ドラキュラ
「………ちょっとこの子こらしめていいかな?(怒)」
ベルトで幼い女の子を締め上げる長身でガタイの良いの男…………どこから見ても変態以外の何者でもない。
ミイラ男
「ぷ………(笑)」
ドラキュラ
「………クリス君?誰のためにやってるか分かってる??」
狼男
「お前がやると様になるんだよ。」
魔女
「………………(笑)」
リリとクリスが出来るだけ声を出さない様に必死に口を押えて笑いを堪えている。
ドラキュラ
「………もうお前らなんか嫌い!!(怒)」
ミイラ男
「まぁ盗みはいけないけど……一応こんな小さい女の子だしさ、もう少し優しくしてあげれば?きっと事情があるんだろうし。」
ドラキュラ
「………それもそうだな、君………」
ジョシュアが女の子の乱れた髪の毛を耳に掛け、優しい声のトーンで話し掛けた。
ドラキュラ
「何でこんなことし……」
ジョシュアが言い終わる前に女の子は耳に触れたその手にガブリと噛みついた。
ドラキュラ
「んんんんんーーー……!!!!」
噛まれた手を抑え、かがみ込んだジョシュアを見てフっとニヤけた女の子の頬っぺたをパチンっ……!とクリスが叩いた。
狼男、魔女
「……………!!」
ミイラ男
「お前いい加減にしな!元はと言えばお前が盗みをしたのが悪いんだろ?それでも意地悪しないで優しくしてくれる人に、そんな事しちゃいけないよ!」
「………………。」
そう言って縛られた彼女の手に財布をのせた。
ミイラ男
「本当に必要なら持っていけばいい。でもその代わり、ちゃんと事情は話してもらうよ………それでいい?」
女の子は黙って俯いたままコクリと頷いた。パタパタと手を払いながら戻ってきたジョシュアの手の傷の具合を見ながら、腕の包帯を解き優しくその手に巻いてあげた。
ミイラ男
「ありがと、ジョシュ。」
あまりの痛みに涙目でいるジョシュアの首を抑え自分の方に引き寄せると、クリスは彼の額にお礼のキスをした。
ドラキュラ
「口が良いなぁー……。」
ミイラ男
「図々しいやつ……一回だけだよ?」
「うん」と嬉しそうに返事をしたジョシュアにチュっとキスをした。鼻歌を歌い始めたジョシュアをさて置き、ウェアとリリが女の子から事情を聞き出す。優しく話し掛けるリリの隣で、ウェアが鼻を塞いでいた包帯を少しずらし女の子の首筋をクンクンと嗅ぎ始めた。
ドラキュラ
「お前の方がよっぽど変態だけどな。」
狼男
「黙れキンキーヴァンパイア。」
ドラキュラ
「……新しいニックネームになっちゃうからやめてくれる?(怒)」
狼男
「……君、人間の子じゃないね。」
「……………!!」
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