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第二話 この愛に隔てなど無い 3

 ローザに子供たちの事を任せ、ザックの後に続き巣穴の近くにある小さな湖の(ほとり)に来ると、寝そべる彼の腕の中にちょこんと腰を降ろした。そしてダフィーは自分の背中をその長い舌でペロペロと撫でる彼に詫びを入れた。 ダフィー 「ごめんね、さっき……姉さんが酷い言い方をしたわね。」 ザック 「気にするな。あの時確かに俺らはお前の大切な家族を奪っちまった。」 ダフィー 「でもあなたは私達を守ってくれたわ。今でも不思議で仕方ないの、あの時の出来事が……」 ザック 「……もう忘れちまえ。」  月明かりに照らされたザックのスカイブルーの透き通った瞳が真っ直ぐにダフィーを見つめる……狩られてしまうのだろうか?その目に見つめられる度、つい一瞬そんな感覚に襲われてしまうのだ。ザックの顔が近付くにつれ、ドクン…ドクン…と鼓動が早まる。本能が「今すぐ逃げろ」と心の中で叫んでいる。 僅かに開かれたザックの口……その隙間から輝く二本の長く鋭い牙。その牙が彼女の皮膚を貫くことは無く、再び閉じられた柔らかな大きな口がそっとダフィーの口に触れた。彼女の瞳を見つめながら微笑むザックに、今度はダフィーからキスを返す。額を合わせ、互いを信じてそっと目を瞑る二匹。……狩るものと狩られるもの、強者と弱者。誰も信じまい、だがこの二匹の間には確かに愛が存在した。 ミイラ男 「………そっか、君は三つ子なんだね。」 「うん、僕がララ、あとココとポポ。」 魔女 「ララは女の子でしょう?どうして僕っていうの?」 ララ 「ココとポポが僕って言ってるから。」 ミイラ男 「何だか可愛いね!っていうかさ……服、買ってあげるよ!女の子なのにそんなボロボロなの着てちゃ可哀そう。」 ララ 「いらない……このお金、ニックに渡す。」 魔女 「ニック……?」 ドラキュラ 「例のレオパードか?」 狼男 「脅されてるの?」  ララが怖がるから黙って後ろを歩いて居ろと言われていたジョシュアとウェアが、この時会話に入ってきた。 ララ 「うん、全部で3匹居るの。ニックと弟のザック、その二人のお母さん、あと一番怖いのが……」  まるで王座に座る様に岩の頂上に堂々と寝転ぶ一頭が、草むらの上に座る者達に問い掛けた。 「いつまであの狐共を生かしておくつもりだ?」 ニック 「取り敢えず使い道を探しているところだ。ガキ共は何をさせるにもまだ若すぎる……いっそのこと食っちまえば早いのにザックの野郎がいつも邪魔しやがる。」 ザック 「あれは元から俺の獲物だ。俺がどう食おうと俺の勝手だ。」 「もしやお前、あの母狐に惚れ込んだ訳ではなかろうな……?」 ニック 「冗談だろ(笑)俺らは大型の肉食だぞ?そんな訳が……」 ザック 「くだらん、勝手に言ってろ。」  アジトと出て歩き出すザック。もうこれ以上隠し通すことに無理があるのはずっと前から分かっていた。そんなザックが獣道を歩いていると、ほのかにララの残り香を感じ取った。今日はダフィーが狩りに出る日だ、子供たちはローザと穴倉の中で待っているはず……なのになぜララの匂いが?違和感を覚え、クンクン……と念入りにその匂いを嗅ぎ分ける。 ザック 「……この匂い、ララだけじゃねぇ……!!」 ドーナ 「……答えられぬか。」 ダニエル 「…………。」  自分から顔を反らすダニエルを、ドーナが少し寂しそうに見つめた。真っ向から否定されても傷付いただろうが、無言の答えというのもそれなりにえぐいものだ。 ルドルフ 「お前には知ってもらうべき事がある。……それは通常、ケルス以外の者が知るべき事柄ではないという事だけ初めから飲み込んでおけ。」 ダニエル 「………?」 ルドルフ 「それとは別に、亡くしたお前の部下を蘇らせてやろう。」 ダニエル 「………!!!」 ルドルフ 「もちろん、条件付きでな。」 ダニエル 「……ウィルのことはいい、だがアレンを生き返らせてくれ!あいつには……リリには……必要なんだ!」 ドーナ 「女子(おなご)の真に求める者がお前では無いことが……悔しかったであろう。」 ルドルフ 「構わん、両者とも蘇らせてやる。」 ダニエル 「な……そんな事ができるのか?」 ルドルフ 「わしほどの魔術師ともなればたやすいことよ……そもそもな、わしは初めからそのつもりだったんじゃ!!それを貴様……勝手に取り違えてわしを監禁しよってこの無礼者が!!!」  彼のその声は地下牢に響き渡った。急に人が変わったように話し方が変わったルドルフに、困惑するダニエル。 ダニエル 「どういう意味だ……?初めからそのつもりだった?」 ドーナ 「神堂に行くとしよう……これ以上事がややこしくなるのはご免だ。」

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