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第二話 この愛に隔てなど無い 4
ドラキュラ
「……で?なんでこうなるの?」
白いレースのたくさん付いた、茶色の女の子らしいワンピース。くるくると回るララの着ているスカートの裾がふわっと空気を包んで広がる。「ありがとねー。」服を畳みながらお礼を言うお店のおばちゃんに金貨を渡すジョシュアが「あ、ついでにこれもちょうだい。」と革でできたブレスレットを一つ買った。
魔女
「良く似合ってるわ、良かったわね。」
ララ
「うん!ありがとう……ジョシュ!」
ドラキュラ
「はいよ。」
ふっと微笑んでララの頭を撫でるジョシュアが、後ろでやけにキョロキョロと辺りを警戒するウェアに話し掛けた。
ドラキュラ
「……どうしたの?」
狼男
「何か嫌な予感がする。」
ドラキュラ
「は?何言ってんのお前……」
「動くな。」
その声の方を振り向くと、見知らぬ男がクリスの首筋に長い牙を当ててこちらを見つめている。
ミイラ男
「ジョ、ジョシュ……!」
ドラキュラ
「クリス……!!」
ジョシュアが瞳を赤くしたその時、ララがその男の手に噛みついた。
「っ……!!」
ララ
「この人達は悪い人達じゃない!!はやくクリスを放して!!」
「……ララ……。」
男が爪を食い込ませていたクリスの肩から血が滴る。男から解放されたクリスが両肩を抑えこちらに駆けてきた。胸に飛び込むクリスをしっかりと抱き締めるジョシュアが赤い目で男を睨みつける。そして動きが止まった男の首に、鋭く尖った爪を当てる……。
ララ
「やめて!!その人……悪い人じゃないの!!」
ドラキュラ
「………?」
狼男
「こいつ、ネコ科だね。」
ララ
「この人はザック、ママの恋人の……レオパード。」
それを聞いた全員が驚きのあまり言葉を失った。ジョシュアがセンスを解くとザックはララをひょいっと抱きかかえ、こちらに振り返った。
魔女
「だってさっきララ……家族が食べられちゃうって……」
ザック
「少し訳があってな……話すと長くなる。今は取り敢えず、こいつを家に送らせてくれないか?きっと今頃は母親が血相を変えて探しているはずだ。」
ドラキュラ
「何言ってんのお前?クリスに怪我負わしといて偉そうに要求してんじゃねぇよ。大体こんなガキに盗みなんかさせやがってよ……親が親なら子も子だな。」
ザック
「……すまなかった。」
ミイラ男
「そんな言い方すんなって……もういいよジョシュ。ララが悪い奴じゃないって言うんなら俺、信じるよ。傷も浅いし、包帯いくらでもあるし!」
狼男
「俺が代わりに送って来てあげるよ、ついでにこの辺りの道も覚えたいし。ララちゃん、俺を案内してくれるかい?」
「うん!」とニッコリ微笑んだララがウェアの手を引っ張り通りの角を曲がって行った。
ザック
「奴も肉食だろ、信頼していいのか?」
魔女
「心配ないわ……夜に女一人襲う事も出来ないくらい優しい男だから。」
ドラキュラ
「うん……何かそこは友達として否定してやるべきなのかどうなのか……」
ザック
「俺はレオパードのザック、獣人だ。ここじゃちょっとアレだから……どこか店に入ろう。」
そう言って歩き出すザックに付いて行く三人。見てくれは良く引き締まった身体の男性で、獣人と言われなければ気付く事は無いだろう。その点では普段から耳を出したままにしているウェアよりも警戒心が強いのかもしれない。その落ち着いた話し方や状況の読み込みの速さからしてこの男、頭は大分きれるようだ。
ザック
「さっきは悪かった。ララが攫われたのかと思ってつい……。お宅ら見ねぇ顔だな、この街に来たばっかりか?」
ミイラ男
「うん、昨日着いたばっかりなんだ。……って言っても明後日には出ちゃうけどね。」
ドラキュラ
「レオパードってヒョウみたいなやつだろ?それが何?狐とできてんの?禁断じゃん……そんな事ってあるんだね。」
魔女
「ミイラ男とヴァンパイアだって十分禁断でしょ?」
ミイラ男
「死神と魔女もね(笑)」
ドラキュラ
「死神と魔女は同類だろ、どっちも悪魔みたいなもんじゃん。」
魔女
「ヴァンパイアのあんたに言われたくないわよ(怒)」
ザック
「どうやってララと知り合った?」
ミイラ男
「ララが俺の財布をすったんだよ。んで、捕まえて訳を聞いたら家族が食べられちゃうんだって言い出して……」
ザックが酒屋のドアの取っ手を引き、三人を先に中に入れた。
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