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第三話 真実への褒美、欺きへの天罰 1
トニー
「代わりに誰かを想像してるのかい……?」
ミイラ男
「………!」
パラパラと解かれていくクリスの包帯が、フロアの上に捨てられる。トニーの濡れた舌が通った箇所が、空気に触れて冷たく感じる……。口の中をかき混ぜるその指がスーっとクリスの歯を撫で、彼の舌を少しだけ押しながら奥に、手前に、いやらしく動く。
ミイラ男
「やめろ……。」
トニー
「さっきまでの威勢はどうした?ほら……もっと俺を煽 ってみろ。」
ミイラ男
「くそ……」
嫌がる気持ちとは裏腹に、身体が喜んで反応をしている。……そんな自分に対して吐き気がしてならない。
ミイラ男
「クソ野郎……!」
クリスを自分と向かい合わせに立たせ、顎を掴みそのまま深く口付けをする。嫌がり逃げ回るクリスの舌を楽しそうに自分の舌で追いかけるトニー。……火照った体が意識をボーっとさせ、朦朧とするその意識の中でジョシュアに申し訳ない気持ちで涙が溢れた。どんな形にしろ、これはきっと彼への裏切りだろう。こんな見知らぬ男のために固くなる自分のソレを今すぐ切り落としまいたい、本当にそう思った。彼以外の男に抱かれるくらいなら、死んでしまいたい………。ジョシュアの顔が頭に浮かぶ。意地悪を言う時の顔、心配してくれる時の顔、優しく微笑んでキスをしてくれるジョシュア……会いたい……会いたい……もう、会えないのだろうか?
ミイラ男
「ジョシュ……はぁ……ジョシュ……」
ガシっと首を掴んだトニーが鋭い目つきでクリスを睨みつけた。
トニー
「他の奴のこと考えてんじゃねぇよ。」
ミイラ男
「……じゃあ俺の脳ミソほじくり出せば?」
余裕など無いくせに、生意気に口答えするクリスの首を絞めるトニーの手に力が入る……。
トニー
「今お前を殺してやってもいいんだぞ……だがそしたらもう二度と、愛するジョシュには会えなくなるな。」
ミイラ男
「やれよ……お前に抱かれるよりはマシだ。」
トニー
「お前の愛するジョシュは来ねぇよ。」
ミイラ男
「…………。」
あからさまに悲しい顔をするクリスに、何だか妬けてしまうトニーはもっとクリスを虐めたくなる……自分の方にその心を向かせるために。少し痛みを覚えさせたくて、クリスに再び目隠しをして口にロープをくわえさせた。
トニー
「俺だけを見るなら、優しく抱いてやる……どうする?」
その答えはきっと決まっているだろう……現実を理解した上で、それでも確かめてみたかったのだ。
ミイラ男
「……クソ食らえ。」
トニー
「…………。」
再びクリスの体を壁側に向かせ、穴の周りを両手の親指でグっと広げた。もうその時点で激痛に襲われているクリスが、ロープを力一杯に噛みしめる。
トニー
「痛ぇだろ、もう一度チャンスをやろうか?」
ロープを少しだけ下げてクリスの返事を待つその横顔に、ぺっと唾を吐いた。
ミイラ男
「うるせぇ、てめぇのナニでもしゃぶってろ。」
ふ……と一度微笑むとロープを口に戻し、固くなった自分のソレをクリスの中にねじ込んだ。
ミイラ男
「んんんんんんんんん………!!!」
耐え難い痛みに失神しそうになる。まだ半分も入っていないのにクリスの入り口は燃える様な焼け付く痛みに襲われる。バっ…と急に引き抜かれた時もまた、激痛が下半身中に走った。もう二度目は無理そうだ……痛みが想像以上だった。必死に息を整え、再度来るであろう痛みに構える。その時、ガタン!と音がした。背後から男の気配が消え、しばらくするとロープが外された。体を正面に向けられ、口付けされる。好きでも無い男にされるのがこんなにも気持ちの悪い事だったのかと改めて思い知らされた……改めて知ったところで、もう遅いのだ。せめて最後はジョシュアの唇を思い出して……だが匂いが違う。その唇は、さっきまでのと匂いが違った。意識を集中させてみると、柔らかさも形も少し違う……そう、確かに覚えがある。目隠しがそっと外され、まだ慣れない目が視界をぼかす。
ドラキュラ
「遅くなってごめん……クリス……」
ミイラ男
「………!!」
金色の左目から大粒の涙を流し、ジョシュアの胸に飛び込んだ。後ろに縛られた手が解放されると、長い間同じ格好で固まっていたためにその腕に痺れがはしる。
ミイラ男
「ジョシュ、ごめん、俺……」
ドラキュラ
「何も言うな……お前は何も悪くない。」
そう言って全てを受け止め、しっかりと抱き締めてくれるジョシュアに申し訳なくて涙が止まらない。……この傷は癒えるのだろうか?身を滅ぼしそうな程のこの罪悪感は、いつか消えて無くなるのだろうか……?
狼男
「リリの姿が見当たらない……!」
ガタンっ……と威勢よくドアを開けたウェアが焦った表情でそう言った。
ミイラ男
「ってか、あいつは?!」
ドラキュラ
「俺が部屋に来た時にはお前しかいなかったぞ。」
ミイラ男
「そんな……だってついさっきまで俺、あいつに……」
言い掛けて飲み込んだ。『あいつに犯されて』などジョシュアの前で言えるはずもない。俯いて言葉を探すクリスの頭を優しく撫でるジョシュア。
ドラキュラ
「取り敢えず今は、リリを探そう。」
ミイラ男
「………うん!」
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