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第三話 真実への褒美、欺きへの天罰 3

 三人が中央階段を上ると、神堂の入り口の前に立つネスが彼らを迎えた。ネスは何も聞かずにニコっと微笑み、扉を開けた。 静まり返る神堂内に、カツカツカツ……と椅子の肘掛けに爪を立てる音が虚しく響く。集められたメンバーがもう長い間待たされ、痺れを切らしているところにネスを先頭にドーナ、ダニエルが順に神堂内に入ってきた。 「遅かったな、待ちくたびれたぞ。」  メンバーの中の一人がそう言うと、ネスが苦笑いをしながら「悪いね」と一言謝罪をした。そして彼は椅子の前に立ったままメンバーに向かって話し出した。 ネス 「今日集まってもらったのは他でもない、ある重要な事についてメンバーの皆で話し合っておきたかったからだ。先にこの場で僕の口から伝えておく……ルドルフを釈放した。」 「………!!」  ケルスのメンバーが驚いた表情で互いに顔を見合わせる。 ネス 「まぁ厳密に言えば、解放の方が正しいかな?彼はそもそも例の内通者ではない。その者は他に居て、そやつの気を緩めるためにルドルフには少しの間皆から誤解されたままで居てもらったのだ。」 「我々にまで黙っていた理由を申せ。」 ネス 「内通者はモズの中に居る。それが分かった以上、モズの隊員とも親交の深い我々ケルスの誰かが関わっていないとも言い切れない。念入りに考えた上での僕の単独行動だった。すまなかったね、気を悪くしないでほしい。」 「ルドルフが我らメンバーには無断でダニエルの部下に依頼を契約させた件についてはどう弁解するつもりだ?ドーナ……お主も知っていたのか?」 ドーナ 「いいや、今朝知らされたばかりだ。真実を申せば私も未だ半信半疑な箇所はあるが、ネスの言う事ならば信じざるを得まい。」 「ふむ………。」  肘掛けに肘を付き、じっとドーナを見つめていたグリフィンがこの時口を開いた。 グリフィン 「ドーナ、お前が信じる者を俺は信じる。ダニエルよ……お前はこの者に大事な部下を奪われたのだな。」 ダニエル 「………あぁ。」 グリフィン 「名は何と言ったか?」 ダニエル 「ウィリアム。」 グリフィン 「ならばウィリアムの帰還が最優先事項だ。どんな事情があったとは言え、一つの無実な命を奪い去り、その者を愛した者達に耐えようの無い心身の苦痛を与えたことはたとえケルスの一員とはいえ許されざる行為。その椅子に戻りたくば自らの罪を償え、ルドルフよ。」 ルドルフ 「お前がそう言う気も分からんでもない……だがな、これだけは言わしてもらおう。」 グリフィン 「………?」 ルドルフ 「貴様のドラ息子をしっかりしつけとけ!」 グリフィン 「な………。」 ルドルフ 「ウィリアムの奴が赤子を(かくま)うのは想定外であった。それ故にネスとの計画の歯車が食い違ったのだ。あやつを(あや)めるつもりなど初めから無かったわい。」 ダニエル 「………?」 ドーナ 「ネスよ、お前も一枚噛んでいたのか?」 ネス 「いやぁ参ったね、あの時は……」

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