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第三話 真実への褒美、欺きへの天罰 4

   ー 320年前 ー  お化け屋敷の様な不気味な館で、いつものように研究に没頭していたルドルフ。そんな彼が薬物を調合している最中(さなか)、ギギギ……と木が(きし)む音と共にドアが開いた。その者は何も言わず、ただその場に(たたず)んでいる。 ルドルフ 「……何の用だ、ネスよ。」 ネス 「おや、驚いたね。君は背中に目がついているのかい?」 ルドルフ 「……わしを誰だと思っておる。」 ネス 「率直に言おう、今度ダニーの部下の一人に我々ケルスから依頼をしようと思う。」 ルドルフ 「……何の真似だ?そやつはモズでは無かろう?」 ネス 「ゴーダのひよっ子君らしい。」 ルドルフ 「くだらん、何の得があるというのだ。」 ネス 「昇進さ。ダニーがいつもその子の昇進を心から願っている事は僕もドーナ達もよく知っている。信じられるかい?あんな赤ん坊だったダニーが、自分で進路を決め我々の推薦を使わずに自らの力でここまで上りつめたのだから。」  中央の大きな机の端に浅く腰掛けそう話すネスに、ルドルフが試験管を振りながら答えた。 ルドルフ 「まぁ多少は大目に見てもらったのだろうがな。」 ネス 「まぁね、でもさ……何だか嬉しいもんだね。」 ルドルフ 「……そうだな。」  そう言って静かに微笑む二人は、どこか誇らしげにダニエルの成長を実感する。 ネス 「ふむ、どれどれ……」  たまたま目の前の棚に置いてあった緑色の液体が入ったフラスコを掴み、大きめのビーカーの中に一センチ程その液体を注いだ。その中に薬品漬けにされている小さなカエルを机の上に置いてあったピンセットでつまみポチャっと落とした。しばらく様子を見ていると、動き出すどころかカエルもろとも液体がどす黒く変色し、異臭を放し始めた……。その匂いに気が付いたルドルフが急いで飛んでくると棚の下の段から透明な液体を取り出し、ビーカーの中に入れかき回した。カエルが入った液体が中和され、化学反応で見る見るうちに綺麗な青色に変色してゆく………。 ネス 「おや、お見事!」 ルドルフ 「出て行けこの馬鹿者め!」 ネス 「いやぁ思っていたよりも難しいものだね、適当にやれば何かしらが出来るのかと思っていたよ。」 ルドルフ 「………錬金術を舐めるでない。」 ネス 「例の奴の再封印に必要なのは、アレだと以前に言っていたね。どうだい?これを機にダニーの部下のウィリアム君にその件を任せてみては。気が気でないだろうから、ダニーには彼の見張り兼、助っ人役を頼むとしよう。中々名案じゃないかな?ルドルフ、君も研究を離れるのは惜しいのだろう……?」 ルドルフ 「だが他のメンバーに内密で決めた依頼を契約させることは出来ぬであろう?」 ネス 「そこが問題だ。君と僕……あと四人は必要だ。ドーナもグリフィンもきっと反対するだろうね。死神とは欺くことを生業(なりわい)としている様な生き物。そんな我々が奴らに近付くことには大きなリスクが伴うからね。さて、どうしたものか……」  ネスに背中を向け椅子に座り、調合していた粉を半分試験管に入れるルドルフがガタガタと震え出した……。そしてまた何事も無かったように調合を続ける彼が不気味な笑い声を発し、喋り出す。 ルドルフ 「ふふふ……名案だな、お前は天才だ、ネスよ……そのウィリアムとやらに全て任せよう……奴らからアレを奪いここに持ち帰らせる……死ぬかもしれんなぁ……だがそんなこと、誰が知った事か……ふふふ……命など、有って無いようなもの……わしに任せろ、ちょいと演じてやろう……ふふふ……」 ネス 「おや、出てきちゃったみたいだね………じゃあ僕はそろそろ失礼するよ。」 ルドルフ 「ふふふ……次の満月の夜、また会おう……」

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