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第三話 真実への褒美、欺きへの天罰 6
ザックが母と別れた後、一同は借りている馬車へと戻り、ジョシュアが御者に予定を早めた事を伝えると御者から一通の手紙を手渡された。
ドラキュラ
「………誰から?」
御者
「リリ様からです。」
急いで広げて見てみるとそこには、彼女が攫 われた訳ではなく自分の意志で別行動をとっている事、しばらくは会えない事、心配しないでほしいと書かれていた。ジョシュアはその手紙の内容を皆に報告し、ザックに今晩はここで子狐達を寝かせてやれと告げウェアとクリスを連れてホテルに戻った。
ジョシュアは自分達の部屋にウェアを招き、これからの事について少し話し合うことにした。
ミイラ男
「二人とも何か飲む?俺頼んできてあげよっか?」
そんな気の利いたクリスの誘いに「ありがとう」と二人が返す。テーブルの上に飾られている二輪の赤い薔薇の花びらを指で優しくなぞりながら、ウェアは窓辺に軽く腰を掛けて外を眺めているジョシュアにこう話し掛けた。
狼男
「お前、実家帰るの何十年ぶりよ?」
ドラキュラ
「大分久しいね。みんなまだ生きてんのかな……」
狼男
「生きてるだろ(笑)」
ドラキュラ
「実家ではさ……クリスはただの友達ってことにしといてくれる?」
狼男
「え?……うん、分かった。」
酒を抱えたクリスが部屋に戻るとそこに二人の姿は無く、拍子抜けをしたクリスが酒をテーブルの上に置いた。赤い花びらが一枚、ガラスの細長い花瓶のすぐ隣に落ちていて、その花瓶の淵には一枚のメモ用紙が挟まっていた。「ごめんね、少し疲れちゃったから今日はもう休むね。ウェア」メッセージを読み終わり、クリスがその紙切れをテーブルの上に置いた時、何やら部屋の奥の方から水が流れる音が聞こえてくることに気が付いた。……誰かがシャワーを浴びているみたいだ。
ミイラ男
「……ジョシュ……?」
邪魔をしては悪いと、一人ベッドの上に座り持って来たビールをゴクリと飲んだ。言うべきだろうか?トニーにされたこと全てを……どこからどこまで?ジョシュアがあの時、何も言うなと言ってくれた意味をクリスなりに色々と考えた。結局どうするべきか分からないまま、ため息をつきもう一口ビールを飲んだ。
キュっ…。閉めた蛇口の音が浴室に響き、シャワーを浴び終えたジョシュアが真っ白なバスタオルを掴み、それで身体を拭いた。タオルを腰に巻いたジョシュアが寝室を覗くと、そこにはベッドに座り思い詰めたように何か考え事をしているクリスがいた。体調でも悪いのだろうか?俯いている彼はあまり元気が無いように見える。
ドラキュラ
「大丈夫か?」
ジョシュアからのそんな問いに「うん」と頷き顔を上げる。いつもその黒い髪の毛を後ろに流して固めているジョシュア。だが今目の前にいる男のストレートなその髪はサラサラと踊っている。
ミイラ男
「……何か……雰囲気違うね。」
ドラキュラ
「そう?どっちが好み?」
ニヤリと笑い、そう尋ねたジョシュアがクリスの隣に寝そべる。彼の体重で軋むベッドの上で、ビールがこぼれないように樽のジョッキを両手で抑えた。
ミイラ男
「どっちも……好き。」
ドラキュラ
「クリス。」
ミイラ男
「………ん?」
ベッドの上でこの自分をぎゅっと抱きしめてくれているジョシュアは今、一体どんな顔をしているのだろうか?……悲しい顔はしていないだろうか?
ジョッキを支えるクリスの手首を掴んだジョシュアは、あの時ララのドレスと一緒に買ったブレスレットをクリスの手首に付ける。「きつくない?」そう言って長さを調節しながら端同士をきつく結んだ。そして結び終わるともう一度「クリス。」と彼の名前を呼び、彼の注意をこちらに向けてこう言ったのだ。
ドラキュラ
「……俺が居る。」
……顔に出てしまっていたのだろうか?込み上げる罪悪感のせいでジョシュアへの対応がどうしてもぎこちなくなってしまっていた自分に、彼が気付いてくれたのだろうか?彼に何と伝えればいいのだろう……そしてそれを伝えた時、彼は一体どう思うだろう?
ミイラ男
「ジョシュ、ごめん……俺…」
言葉を詰まらせながら謝るクリスの唇に、ジョシュアの唇がそっと触れる。少し離しては、また優しく重ねる。そのままクリスの頭を自分の胸に埋め、ぎゅーっと深く抱きしめた。
その胸は温かくてしっかりしていて、ドクン……ドクン……と内側から強く響く彼の鼓動が、クリスの脳内にある余計な考えを打ち消してくれる。「何も言わなくて良いよ。」彼の心がそう言っているように感じる。
ミイラ男
「ジョシュ……」
ドラキュラ
「………?」
ミイラ男
「俺を抱いてよ。」
少し驚いた表情をした後、その顔は心配そうな表情に変わった。きっとまた焼け付くように痛むだろう。傷もまだ癒えてなどいない。だけど……自分を彼のものにして欲しかった。この首筋にその鋭い牙で深くマークを付けて、他のオスをもう二度と近付けさせないように……。
ドラキュラ
「痛いだろうけど、我慢して。」
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