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第三話 真実への褒美、欺きへの天罰 8

ネス 「そうか……ダニーは知らなかったんだね。」 ダニエル 「多重人格だと?」  都合の良い言い訳だろうか?とても信じ難い事……だが、時よりまるで別人のように気味悪く笑い出しては非道な言動をする彼を何度も見てきた。そう考えると、彼が複数の人格を隠し持っているという事実には辻褄が合う箇所が多い。 ドーナ 「一方は物分かりの良き優しき老人だが、もう一方は……」 グリフィン 「冷酷な悪魔のような男だ。その男に代わると奴は残虐な事でも平然とやりよる。」 ネス 「いつもはその二人が順番に出て来るんだよ。まれに他のも出て来るけど、その二人ほど頻繁には出てこないね。」  彼らのそんな冷静な姿勢からして、ケルスはその事を把握した上で同じメンバーとして彼と接してきたみたいだ。その事実を知ったダニエルは、ルドルフを軽蔑した目で見つめる。ダニエルのその視線から彼の今の心を読み取り、ダニエルからは何も言われずとも自ら答えを返した。 ルドルフ 「あやつらが()ってのわしなのだ。そしてわしが居ってのあやつら………欠けてはならんのだよ。興味深いであろう?ウィリアムに依頼をしたのはわしではなくあやつだ。」 ダニエル 「チっ……。こんなふざけた野郎に、ウィルは……!!」  彼はまだ若く未来があり、夢があり、正直に生き、やっと見つけたアレンという名の愛を大事に大事に慈しみ、血も繋がっておらぬ幼き子の命を守った心優しき青年。「ダニエルさん」……あの声が聞けなくなった理由が、そんなふざけた体質のためであると……?腹が立って仕方が無い。これが組織であり……これが、ケルスなのだ。この熱く腹が煮えたぎるような思いをどこに向ければいい?いっその事、この手でこやつを消してしまおうか。感情的になり理性を失ったダニエルが、その手の平をルドルフに向けた。 ネス 「………静止………」  ネスにより動きを止められたダニエルの手に、再び鎖がつけられた。術を解いたネスがダニエルに一言詫びる。 ネス 「……すまないね、ダニー。だがここ神堂では争いは禁じられている。それは君も分かっているね?」 ダニエル 「………。」 ルドルフ 「ウィリアムとその恋人であったアレンという女子、その両者を蘇らせる。それでこの件は終いだ。これ以降、(とが)めを受ける気はない。」 グリフィン 「それで()いか?ダニエルよ。」  ……それで、いいのか?ダニエルは自らの心に問い掛けた。 ダニエル 「あぁ。」 ネス 「300年以上前に死んだ者を蘇生するのに、何もない所から生み出す訳にもいかないはず。どうするつもりなのかな?」 ルドルフ 「蘇生をするために必要になる材料はその術者によって異なる。ほぼ同量の質量の同族の者を必要とする術者もいれば、何の関係もない他の生き物から作り出せる術者もいる。その術者の経験と知識、魔力の違いにもよるのだ。」 ネス 「ふむ……それは中々興味深い。」 ドーナ 「して、お主は何を必要とする?」 ルドルフ 「……同族の身体の一部だ。」

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