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第三話 真実への褒美、欺きへの天罰 9
ジョシュアの指がクリスの入り口を優しく撫でる……指が触れるその感覚で、嫌でもあの瞬間を思い出してしまう。そんな自らの脳を意地でも支配して、クリスは今この時だけを考えようと意識を集中させる。「これはあいつではなくジョシュアなんだ。」そう確信したくて、彼の声が聞きたくなった。
ミイラ男
「ジョシュ、声……聞かせて?」
どの行動がトリガーになるだろうか?乱暴をされた者には少なからずトラウマが残るはず。自分があの部屋に入った時、クリスは縛られた状態で壁に向かって立っていた。という事はこのポジションでは辛い思いをさせてしまうかもしれない。ジョシュアはクリスの肩を優しく掴み、彼の身体を反転させた。
ドラキュラ
「クリス、大丈夫だよ。俺だよ……クリス君のことが大好きなヴァンパイアさんですよ。」
彼の緊張を和ませたくて、少し冗談交じりにそう言った。クスっと微笑んだ彼のその笑顔には、きっと天使もその席を譲るであろう。
ミイラ男
「ジョシュ、ありがとう。」
こんな自分を愛してくれる彼に、それを上回るくらいの愛情を捧げたい。この肌の温もりも匂いも、間違いなくジョシュアのもの。『愛おしい』……クリスは心からそう感じる。
ドラキュラ
「……本当に、大丈夫?」
クリスの肩にキスをするジョシュアはその手をクリスの腕にスーっと這わせていき、手首を掴む。そしてそのまま更に上ってゆき、しっかりと指を絡めた。
ミイラ男
「うん。」
きっと心配で仕方が無いのだろう。何度も確認をするジョシュアの優しさに、クリスは改めて心を惹かれる。「い……」裂けた傷口に触れるとまだ鋭い痛みが走る。歯を食いしばり痛みに耐えようとするクリスを、ジョシュアはぎゅっと強く抱きしめた。腹部に当たるジョシュアの熱く固くなったソレが、彼が今クリスを欲していることを伝える。どうしても欲しいが、痛い思いはさせたくない……抱きしめて躊躇うジョシュアに、クリスが言った。
ミイラ男
「入れて、ジョシュ。」
ドラキュラ
「………。」
それを聞いた後でもやはり踏ん切りがつかず、クリスの肩にチュっとキスをしてそこに顔を埋めた。
ドラキュラ
「お前に痛い思いはさせたくない……そんな風にして、お前を抱きたくはない。」
彼はなぜ、そんなにまで躊躇うのだろうか?入れる側がなぜそこまで、される側を思うのだろうか?ただ単に彼が優しいからなのか、何か事情があるのか、クリスには分かるはずもない。
ミイラ男
「……じゃあ噛んでよ、血を飲んだら本能が復活するかもよ?」
ドラキュラ
「そんな、去勢した猫じゃないんだから……」
ミイラ男
「やめろよ、ムードが壊れるだろ(笑)」
ドラキュラ
「じゃあ、ちょっとチクっと……っていうかグサッとするけど我慢してね。」
ミイラ男
「痛くすんなよ。」
ドラキュラ
「任せろ。」
食い込むジョシュアの犬歯が、スっと皮膚の中に消えた。その瞬間だけジョシュアの身体をガシっと抱きしめるクリス。元々こんなものなのか、それともジョシュアが上手いのか……思っていたほど酷い痛みではなかったことに、クリスはまだ少し驚いたままで居る。
ミイラ男
「……思ってたほど痛くなかった。」
ドラキュラ
「……………。」
そう感想を述べたクリスだったが、ジョシュアからの返事がまだ返ってこない。首をかまれているままの姿勢で「大丈夫?」と聞くと彼は「う、うん……」と若干戸惑ったような様子で返事をした。
ドラキュラ
「クリス……お前って……」
そう何かを言い掛けた途端、ジョシュアが激しく咳き込んだ。威勢よく立ち上がると、彼は口を押えてそのまま洗面所へと走った。何が起きたのか分からず、クリスも急いで彼の後を追う。
ドラキュラ
「………来るな!!!」
ミイラ男
「………!」
ジョシュアが発したその怒鳴り声が、クリスの足を止めた。胸を抑え苦しそうにシンクの淵を握りしめるジョシュア。一体何が起きたというのだろうか。噛まれた首を抑え、訳も分からずその場に立ち尽くすクリス……。するとジョシュアがこちらを向き、「大丈夫だよ。」とそっと微笑んだ。その顔は血色が酷く悪く、今にも倒れてしまいそうに弱っている。
ミイラ男
「ジョシュ…………。」
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