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第四話 思い出の蓋を開けて 4
ドラキュラ
「……例の何百年も前に亡くなったっていう同族の男の子のことか?」
死神
「あぁ。」
そう返事をしたリーパーがリビングにある本棚の引き出しを開け、中からボロボロになった紙切れを取り出した。それをゆっくりと破れないよう慎重に広げ、声には出さずに読んだ。
狼男
「……それで、何のためにここに?」
その問いを受け、読んだ紙切れを再び線の通りに折り畳み、それをポケットの中に閉まって言った。
死神
「クリス………お前、本名は何だ?」
ミイラ男
「………え?」
想定外なタイミングとその質問の内容にクリスは一瞬呆気に取られた後、我に返ってその質問に答えた。
ミイラ男
「俺は……」
ドラキュラ
「レイフィールド、クリス・レイフィールド。」
ミイラ男
「………?」
死神
「………そうか。」
それだけ言うと、リーパーは他の部屋に行ってしまった。不思議そうな顔でジョシュアを見つめたクリスが、先程リーパーが閉めた引き出しが閉まり切っていないことに気が付きその取っ手を掴んで優しく押した。ガタっ……何かが奥に引っ掛かって引き出しが閉まらない。仕方ない……と一度引き出しを開けると、そこにはホコリまみれの木箱があった。「これが原因か……」とその木箱を取り出し、表面のホコリを手で払う。
ミイラ男
「んー……何かの入れ物かな?」
箱を左右に振ると、カタカタ……と何か固くて小さい物が木箱に当たる音がする。気になるが、他人の物を勝手に開けるのも気が引ける……結局そのまま棚の上に戻そうとした時、ジョシュアが何の躊躇もなくその蓋をパカっと開けた。
ミイラ男
「お前、開けるかよ普通……。」
ドラキュラ
「故人に気を使ったって仕方ねぇだろ。」
まぁそれもそうか、とジョシュアと一緒に箱の中身を覗く……全て同じ厚さの色とりどりの木の破片のようだ。趣味で集めていたものだろうか?幾つかその破片を手に取り、手の平の上に並べる。クリスの手の平の上に置かれた破片を見て首を傾げながらジョシュアが言った。
ドラキュラ
「パズル……みたいだな。」
ミイラ男
「うん……。」
結局それが実際に何なのかは分からないまま、クリスは破片を木箱に戻し、蓋を閉めて箱を棚に置いた。戻ってきたリーパーから「何か見つかったか?」と聞かれたが「いいや、何も」と答え肩をすくめた。
死神
「何だっていい……何かアレンの物が残っていればと思ったが、そうもいかねぇか。」
ドラキュラ
「残ってたらって?カラッカラに乾いた目玉でも落ちてればってか?蘇生に必要なのは身体の一部なんだろ?そんなもんがそもそも部屋の中に落ちてる訳ないじゃん……しかも300年以上も経ってたら使い物になんかなんねぇだろ。」
死神
「誰か知り合いに……魔女はいるか?」
ドラキュラ
「……居たら?」
死神
「蘇生のために、身体の一部を……」
その瞬間、物凄い勢いでジョシュアがリーパーを殴り飛ばした。驚愕するウェアとクリスには目もくれず、ジョシュアはそのままよろけるリーパーの胸ぐらを掴み壁にその体をガタンっ!と叩きつけた。
ドラキュラ
「いい加減にしろよお前……どれだけ関係無い奴を巻き込めば気が済むんだよ。てめぇの女喜ばせたいってだけでよ、自分勝手な選択ばっかりしやがって……お前一度でも俺らの事考えたか?勝手に姿消したお前のこと心配して追って来てよ、キョロっとした顔で何事も無かったみたいに戻って来て何、馬鹿にしてんの?」
ミイラ男
「ちょ………ジョシュ!」
死神
「ってぇな放せこのクソ野郎……てめぇに何が分かんだよ?あ?あの時だってよ、俺は誰を選んで誰を見殺しにすりゃいいか、どれを取ってどれを捨てりゃいいのか……分かんねぇままあいつら二人とも死んじまったんだよ!!どんな顔見せたらいいのか分かんなくてよ……情けなくて、でもあいつのことが心配で、仇討 ちされる覚悟で顔を見に行った俺に向かってあいつ、何て言ったと思う?」
ドラキュラ
「………?」
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