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第四話 思い出の蓋を開けて 8

死神 「……どうした?気分でも悪いのか?」  草むらの上に座り、古木に寄りかかっているリーパーの隣で同じように腰を降ろした。そんなクリスは引きつった顔で額を抑えている。 ミイラ男 「うん……ちょっと頭痛くて。さっき何でいきなり俺の名前聞いてきたの?」 死神 「別に深い意味はねぇよ、ちょっと気になっただけだよ。」 ミイラ男 「……そっか。」  トニーから乱暴をされて以来、男と近い距離にいると胸騒ぎがするのだ。いくらリーパーがジョシュアの友達だとはいえ、彼に対しても身体が勝手に警戒してしまう。 死神 「……俺のことがまだ怖いか?」 ミイラ男 「え、いや……そうじゃなくてさ。ジョシュにはまだ言ってないんだけど、俺……」  引いてしまうだろうか?男に乱暴をされた話など聞かされたら……だがこれ以上一人で抱え込むのは無理がありそうだ。このままあの出来事と一人で向かい合っていたら、きっと迷路にはまってしまうだろう。クリスはリーパーにトニーからされた事を打ち明けた。初めは驚いた表情を見せたが、クリスが話し終わるまで「うん、うん」と静かに聞いてくれた。話が終わった後、気まずそうに「あはは」と笑うクリスに向かってリーパーが両腕を広げる。 ミイラ男 「………?」 死神 「来いよ。」  あのリーパーが、まさか自分を慰めようとしてくれているのか?意図がつかめないまま、言われた通りにその腕に包まれた。彼の着ている漆黒の色のローブは思っていたよりもフワフワしていて触り心地が良い。その胸は温かかく、ドクン、ドクン……と心臓の音が伝わる。 ミイラ男 「死神にも心臓ってあるんだ……!」 死神 「じゃあどうやって生きてると思ってたの?」  呆れた顔で問い返してくるリーパーにクスっと笑う。リリはいつもこの胸に癒されてきたのか……これじゃあ離れたくも無いはずだ。この二人にあんな悲しい過去があったなんて知りもしなかった。その後に別れてしまった二人、それでもずっとリリを想い続けたリーパー。リリにはもう彼と復縁する気はないのだろうか?少なからずリーパーに未練があるのは確かだ……この二人には、これからも一緒に居てほしい。切実な願いを心に秘め、クリスは額をリーパーの胸に埋めた。 ミイラ男 「リーパーって、温かいんだね……!」 死神 「初めて知れた事が沢山あって良かったね。」  皮肉っぽく言ったそんなセリフが、いかにもリーパーらしい。気を使って無理に優しくしようとはせず、ありのままで接してくれる彼に少し心が救われた気分になる。 ミイラ男 「リーパー、今でもリリのこと好き?」 死神 「好きだよ。」 ミイラ男 「……そっか、ありがとう。」 死神 「………?」  ……嬉しかった、その言葉が聞けて。できる事ならリリに聞かせてやりたかった。彼女のことだ、きっと照れながら「馬鹿じゃないの」などと言うだろう。……いや、きっとそんな言葉を聞かなくとも分かっているのかもしれない。心の深い部分で繋がっているこの二人には、毎晩身体を重ね合わせたり四六時中傍にいる必要が無いのだ。……自分とジョシュアはどうだろうか?彼からの反応を恐れ、乱暴された事すら言えないでいる。そんな自分は彼を心から信用していると言えるのか? とても大切な者が居て、その者にどうしても伝えなければならぬ事がある。そしてその事柄はその者を深く傷付けてしまうかもしれない。中々踏ん切りがつかずに現実から逃げ回っているうちに、その者の心からも遠ざかってしまっていた。 ……これ以上逃げ道を探すのはやめよう。クリスは心の中で後ろを振り返り、来た道を戻り始めた。その先に待つ、その者の元へと。 ミイラ男 「……そう言えばさ。」  リーパーの腕から離れ、さっき座っていた位置に戻ったクリスがそう言えば、とリーパーにある事を聞いた。 ミイラ男 「昨日ジョシュが……」

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