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第四話 思い出の蓋を開けて 10
ドラキュラ
「うん………で?? って話なんだけど。」
死神
「いや、それだけ。」
「なんだよ」と笑い合う仲間達を眺めて微笑んだ。この家へ足を運ぶ度、重たい砂袋が心の中に敷き詰められるような感覚になる。どれだけ時が経っても悔やまずにはいられないからだ。今回はこうして友を引き連れ同じ場所にやってきたリーパー。主を亡くした空き家を眺めるのは今でも虚しい気分になる……だが一人で来る時よりもずっと心が軽かった。
愛した者からその者の一番大切なものを奪ってしまったその罪を、背負って生きてきた。失ったものは多く、その殆どがもう戻っては来ないもので……今、彼はまだ迷っていた。果たしてこの蘇生が上手くいったとして、本当にそれで良いのだろうか?それで本当に、全てが解決するのだろうか?……また、同じ悲劇が起こりはしないだろうか?
地面を見つめてぼんやりとそんな事を考えていたリーパーの肩をポンポンっとジョシュアが叩いた。
死神
「………?」
ドラキュラ
「大丈夫か?あんまり考えすぎんな。」
死神
「……あぁ、そうだな。」
「ダニエルさん」……どこか遠くから自分にしか聞こえない小さな声が響いた様な、そんな気がした。死人と口がきけたのなら……ウィリアムは何を望むだろう?無理矢理に運命を捻じ曲げ、この世に生き返る事だろうか?それともこのまま、静かな土の下に眠り続けることだろうか?
「ウィル……お前はどうしたい?」心の中でそう問い掛けたリーパーが、空を見上げ瞼を閉じた。
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