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第五話 誇れるものばかりではないさ、それでもいい 1
グリフィン
「話とは何だ?」
今日の空は雲がその一面を覆いつくし、暖かな日差しを遮断している。神堂へと続く渡り廊下で前を歩くドーナの背中に問い掛けた。彼女は足を止め、ゆっくりと振り返りこう話し始めた。
ドーナ
「時よりネスの行動を理解しかねることがある………お主もか?」
グリフィン
「あぁ、奴の考えはまるで読めん。」
そう言って柵に両肘を置いた。足を止めたグリフィンの隣に来ると、彼女も同じように柵にその身を委ねる。
ドーナ
「ルドルフが正常な時に話しておきたい事があってな。各地の紛争が次第に過激化してきている……今はまだ資源の豊かな国や集落がターゲットになっているが、いつこの地にその範囲を広げるか分からぬ。」
グリフィン
「時間の問題だ。本部がアリスの者に偵察をさせているが、ベイリー湖周辺に大規模なサランドの騎兵隊や歩兵隊を確認している。ミシャーラには強力な魔術師が数多くいると聞く……モーリスの民は戦を好まないが、自らの種の存続のためなら戦いを選ばざるを得ないであろう。」
ルドルフ
「安心しろ、ミシャーラはこの死神界に手出しはせん。」
ドーナ、グリフィン
「…………!」
急に二人の前に姿を現したルドルフがグリフィンの隣で塀にもたれ掛かってそう言った。そして彼はそのまま話を続ける。
ルドルフ
「ミシャーラには知り合いの魔術師が何人も居ってな。仲は良い方だ、時より助け、助けられの仲でな。同盟国とまでは言わぬが………まぁ、案ずる必要は無いであろう。」
ドーナ
「モーリスの者たちも皆、心の優しき者ばかりだ……となると。」
グリフィン
「まず警戒すべきは奴の居るサランドだな。ネスや他のメンバーにもこの事を告げる必要がある。」
その意見に他の二人が同意して頷いた。
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