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第五話 誇れるものばかりではないさ、それでもいい 7

「それは誠か?」 ドーナ 「あぁ、サランドの件はアリスが今も監視を続けているが、間違いない。大勢の軍隊を既に各配置に置いている。戦闘態勢はほぼ整っているであろう。」 「ルドルフの申す事に偽りは無いのか?また我らを欺こうとしているのやもしれぬ。そやつをどこまで信用できるかも把握しきれぬ故。」  その意見にあえて大袈裟に反論する訳でもなく、発言した者の顔を見てルドルフはこう言葉を述べた。 ルドルフ 「そなた等がわしの言う事を信ずるか否か。……わしの言葉がそなた等が信憑するに足りるかどうか。……そんな事はわしにはどうでも良い事だ。疑いたくば疑えば良き事よ。」  信じるか信じないかは己次第。実に明確で簡素であるその意見には他のメンバー達も頷いた。 グリフィン 「ミシャーラには幾人、知人が()るのだ?」 ルドルフ 「あの国はそもそも、多国の流れ者たちが彷徨い果てた末に集まり築き上げた国。よって出身の違う各々がもつ魔術の強さも性質も、全く持って異なる。わしの良く知る者は……そうだな、十人弱、と言ったところか。ミシャーラの国の歴史はそう古くは無い、初めは砂漠の中で足を休めるために設けられたキャンプ場のような隠れ家だった場所に、旅に疲れた者達がいつしか居座り続けるようになり、少しずつその場所に国を築いていったのだ。人口が増える度に建築物も増え、土地を拡大しそれをまとめる者も必然的に必要になった。わしの知り合いの者達とは、その時代から国の民をまとめてきたその者達のことだ。」 ドーナ 「あの国に王が存在しないのはそのためか。」 グリフィン 「国王や権力者に支配され、常に格差の中で生き、目が合えば蔑まれる日々から逃れるために国を去り、彷徨い続けた挙句に辿り着いた場所がミシャーラという国なのはあの国に住まうの大方の民に共通する点なのであろう。その者達が王などという傲慢な支配者を欲しがらぬのは道理にかなっている。」 ネス 「……なるほど、中々興味深い話だね。」 バーロン 「ルドルフの話の中で納得できる点が幾つかあるのは確かだ。しかし憶測だけであの国からの脅威は皆無だと言い切ることも出来まい。……その考えに抜け目があったとしたならば?仮にミシャーラは安全だと判断した上で我らがサランドだけに目を向けている最中(さなか)、背後からミシャーラからの矢が射られるかも分からぬではないか。」 ネス 「我らの知らぬ所でその二国が同盟を組んでいるかもしれぬという事も視野に入れておくべきだろうね。」 グリフィン 「それはモーリスとて同じ事。いくら争いを好まない種であろうと、我々の把握せぬ所で取引を行っているやもしれぬ。これは戦だ、どの国も種族も、その者達の種の存続を懸けて闘っているのだ。そしてそれは………」 ドーナ 「我々とて同じ。」

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