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第五話 誇れるものばかりではないさ、それでもいい 9
ドーナ
「まぁそう張り詰めるでない。神の懐がちゃんと機能するのかどうか、確かめておきたかったのであろう……?」
リーを優しく見つめ、彼女は冗談交じりにそう問い掛けた。折角かけて下さった情けを適当にあしらうのも失礼だと思い、リーは躊躇いがちにその冗談にのって見せた。
リー
「あ……えぇ、ちゃんと機能しているようで………安堵致しました。」
バーロン
「たわけっ!!ふざけた事を抜かしよって!我らを誰と心得ておるのだこの無礼者め!!立場をわきまえんか!」
リー
「し、失礼致しました、失言をお許し下さい………。」
ハハハっと笑うドーナ。もしかして自分は今、彼女に遊ばれているのだろうか?いつもその優しい眼差しで情けをかけてくれるドーナは、たまに人をからかうのが好きな面がある。
ドーナ
「お前のことは信頼している。臆するでない、お主がモズに入る事を私が直々に許可しよう。中々気に入ったぞ、私の護衛につけ。」
先程からグリフィンが品定めをするような目つきでこちらを見つめている事には気付かないフリをしている。目を合わせた瞬間、この世から消し去られてしまいそうな予感がするからだ。
ドーナ
「一つだけ確認しておく。お主は私のためにその命、捨てられるか?」
その質問に答えるのは容易だった。悩む時間も躊躇いも、リーには必要ない。
リー
「いつでも。」
そんな彼の実話は噂以上に面白いものだった。有意義な時間を過ごした後、カップの中のコーヒーを飲み干し、ため息交じりにこう言った。
ダニエル
「あんたがモズを抜けた時、しばらくドーナの元気が無かったのも納得だな。」
リー
「…………?」
口を付けたマグカップを一度口から放し、「どういうことだ?」とでも言いた気にダニエルの顔を見る。それ以上は何も言わず、スパイの件の調査をリー頼むとダニエルは本部を後にしたのだった。
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