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第六話 その瞬間まであと一歩 1
ダニエル
「ネスっていくつなんだ?見た目は俺よりも若ぇけど。」
焚火の炭を棒でつつき、肉に満遍なく火が通るように火力を調節する。赤く染まった炭の先端が、パチパチっと小さく弾けるように火花を放つ。
バーロン
「……さぁな、あいつはいつまでも童 のような顔をしているからな。あの止むに止まれぬ好奇心にはいつも迷惑をしておる。」
ダニエル
「確かにな。それにしてもモーリスの件、さすがにネス一人じゃまずいんじゃないのか?『死神を含めた何者かに殺された。』なんて事、のこのこ一人で伝えに行くなんてよ。」
バーロン
「奴らが憤慨してネスを襲ったとして、一体何が出来よう?モーリスの民が主に使う術は癒しの術。対してネスの能力は……」
ダニエル
「……それもそうだな。肉、焼けたぞ。」
先っぽに肉のついた棒を一本バーロンに手渡し、ダニエルは次の生肉の棒を少し傾けて地面に刺した。
バーロン
「猪も中々悪くはないな。……にしても、まさかテクトどころか地下都市もろ共消え去っているとは……とんだ無駄足であった。」
あの緊急会議の後、ダニエルを連れテクトの元を訪れたバーロンだったが、以前訪れたあの地下都市はもぬけの殻になっていたのだ。しばらく歩き回って何か残されたヒントを探したが何も手掛かりになるような物は見つけられなかった。
ダニエル
「双子なんだろ?ならもう片方を探すしかねぇだろ。」
バーロン
「奴らを探し出すなど不可能。何万年もの間姿を隠し続け、ひっそりと生き伸びてきた者達だ。そんな簡単に見つけ出せるものならばとっくの昔に滅んでいよう。」
ダニエル
「何故あいつらはそこまでして隠れながら生きてるんだ?一体何から逃げている?」
バーロン
「全ての他種族からだ。」
肉を頬張ったバーロンが、モグモグと上手そうにそれを噛みしめる。そこまでしてすべての種族から狙われる理由とは一体何なのか?ダニエルは焼きたての肉よりもその疑問の答えの方が気になって仕方が無い。そんな彼に、ゴクリと飲み込んだバーロンがこう言った。
バーロン
「封印の鍵を守っているからだ。」
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