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第六話 その瞬間まであと一歩 2

ネス 「………いやぁ参ったね。」  死神界を出て東にしばらく進むと、そこには天まで伸びているかのように高くそびえ立つ木々が生い茂る森、ロトンの森がある。この森が死神界とモーリスの森の境界線になっているのだ。ロトンの森の中心部に位置するモーリスの森。そのモーリスの森の入り口でもある超巨大古木メンデスへと辿り着いたネス。この木はロトンとモーリス、二つの森を守っているこの山の神でもある。従って何者もモーリスの森へと入るにはこのメンデスの許可が降りねばならないのだ。 ネス 「大分(だいぶ)……重要()つ急ぎの用なのだが。」  自らの木の幹に巣をつくり暮らしていたリスをメンデスは大層可愛がっていた。だが今朝、メンデスが眠いっている間にそのリスが鳶に狩られてしまったのだ。そのせいで今日のメンデスは大層機嫌が悪い。 メンデス 「ならばここで言え。」  彼が口を開く度、地震のように地面が揺れる。はぁ……と肩を下げため息をついたネスが「仕方無いね……」と観念したように事情を説明し始める。 ネス 「昨日、我ら死神界にて一体の遺体が発見された。その者がモーリスの者であったため、詫びを含め伝言に来た次第だ。」 メンデス 「お主等がやったのか?」 ネス 「いや、真相はまだ不明のまま調査が続いている。近年、各地の抗争が激しくなってきた事もついでに話しておきたい……カラットは居るかい?」 メンデス 「……良かろう、入れ。」  メンデスが大きな口を開けた。「ありがとう。」と礼を告げ、急いで口の中へと入って行く。真っ暗闇の中で蛍光色に光るキノコが道しるべになってくれている。それに従い足を進めていくと木の螺旋階段が見えてきた。その階段を駆け上がり、頂上に着くと右に曲がる。 見渡す限りの大自然に囲まれ、植物や動物は外の世界よりも何倍も大きい。空気中に舞うキラキラと輝く塵……何度足を踏み入れても感動せずにはいられない景色だ。軽い足取りでよぃっ、よぃっ、と透き通った水の流れる小川を渡る。サルのように木の枝からぶら下がって遊ぶモーリスの子供達が地上を歩くネスに気付き明るく声を掛けた。 「やぁ、ネス!久しぶりだね!何しに来たの?」 ネス 「元気にしていたかい?……ちょっとカラットに用があってね。」  その子供は木の中に隠れてしまった。ネスが気にせず歩みを進めていると再びあの子供が今度は違う木の枝から宙ぶらりんになってネスに話し掛けた。 「今ね、おんば様に聞いてきたよ。カラットはペルペルの所に居るってさ。」 ネス 「あれま、じゃあ逆方向だね。ありがとう、行ってみるよ。」  手を振って子供達と別れたネスは来た道を戻り、モーリスの森の中心部にある湖へと向かった。湖に近付くにつれ子供達の賑わう声が聞こえてくる。ツタをかき分け見えた先には眩しく輝くピンク色の水面が。そして崖の上からその水面へとダイブする子供達。何とも微笑ましい光景に心が癒される。 ………はて、例の者はどこに?岸辺から湖を見渡すネスの目の前に突如、豪快に水しぶきを上げ巨大な生物が姿を現した。 ネス 「………!」

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