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第六話 その瞬間まであと一歩 5
狼男
「………眠らなくてもよくなった?」
休憩のために一度停車した森の中にある泉。馬は喉を潤し、子狐達はクリスと共にきゃっきゃと楽しそうに水遊びをしている。クリスが子供達を見ている間、その畔でほっと一休みするダフィーとザック。幼い子を持つ親にとって何ものにも代えがたい、束の間の休息だ。
例年ならばもうとっくに眠りについているはずのジョシュアが、まだ少しも眠たそうにしていない事をずっと不思議に思っていたウェア。馬車の淵に腰掛け、驚いた顔でジョシュアを見上げた。
ドラキュラ
「普通ならもう俺は今頃眠りについてる頃なのに……全く疲れないし、眠気も無いんだよ。毎日血を飲んでるヴァンパイアならまだしも、あまり飲まない俺にとってこんなことはあり得ない。」
狼男
「やっぱり……あれじゃないの?クリスと離れたくないっていう気持ちからじゃないの?」
ドラキュラ
「これは身体的なものだから、そんな理屈でコントロールできるものじゃない。……それをコントロールできるのは飲んだ血のクオリティーか量だけ。それが、あいつがエルフだと思ったもう一つの理由。」
狼男
「でもお前、拒絶反応が出たんだろ?なのに効果はあるっての?」
ドラキュラ
「そこが俺にもよく分からない所だな……親父に聞いてみようと思って。きっと何かしらの情報は持ってるはずだから。」
狼男
「……俺も行かなきゃダメ?……お前の親父さん怖いんだよ……。」
ドラキュラ
「……俺は親父なんかよりもあいつに会いたくねぇよ。」
どこか一点を見つめてそう言ったジョシュア。誰のことだろうか?彼が珍しくあの冷血な顔をしている。目の前で首を傾げるウェアに気付くと、彼はニコっと上手な作り笑いをして見せた。
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