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第六話 その瞬間まであと一歩 7
エリザベス
「好きです、ネス様……!」
ネス
「………!」
ネスの胸に飛び込むエリザベスがやっとその想いを伝えた。……もうずっと、長い間隠し続けてきたこの恋心。彼に振り向いてもらうために沢山自分を磨いてきた。隣に居て彼が恥じぬよう、凛々しく、美しくあるために。
ネス
「……すまないね、それは気付かなかった。」
エリザベスの頭を優しく撫で、微笑みかけてくれるネス。こんな王子様のような男が死神だなんて……運命とは意地悪なものだ。
エリザベス
「ネス様、どうか私をもらってください……」
透き通った綺麗な涙を流し、潤んだ瞳でそんな可愛らしいことを言って困らせるエリザベス。……全く、この森はある意味死神界よりも住みづらいかもしれない。ベスの涙を親指でそっと拭い、そのままその手で彼女の頬を撫でた。
ネス
「僕には守らなければならないものが沢山あるんだ。湖で無邪気に遊ぶ子供達の笑顔を見たかい?あの子達の笑顔を、生き物たちが安全に暮らせる森や自然を……そしてベス、可愛い君の愛するこの地も僕が必ず守ってみせる。だから……分かってくれるかい?」
エリザベス
「………。」
ネス
「今やこの世界は戦争のすぐ一歩手前。どんな些細な火花でも忽 ち大きく燃え上がる炎になり得るであろう。……カラットの元へ、行かせてくれるかい?話さなければならない事が山程あるんだ。」
エリザベス
「えぇ……。」
力なくそう返事をした。いっその事、酷く突き放してくれれば諦めがつくものを……そんな事は出来ないのがネス。だからこれ程までに好きになったのだ。財力も権力も有るどこぞの国の王子など、もう飽きるほど見てきた。どの者もこの手を取り、憎たらしい財宝を見せびらかし……そんな手段でしか己の強さを証明できない哀れな生き物だ。
エリザベスの頬を抑えるネスの手が、彼女の顔を少しだけ上に傾けた。
エリザベス
「………!」
この唇にふわっと触れた、彼の唇……。それは綿のように柔らかく、ほんの少しだけ甘い匂いがした。
ネス
「……今はこれで、我慢しておくれ。」
部屋を去って行くネスの後ろ姿をただボーっと眺めた。手に入らないものとは何故こんなにも媚薬 のようにこの心を誘い、旬の花のように美しく輝いて見えるのだろうか……。
ベス
「ネス様……。」
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