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第七話 虹色の雫 2
ダニエル
「………おい、ルーシー、行くぞ。」
くねくねと地を這い木陰に身を隠す蛇を、しゃがんでただジーっと見つめるルシファー。
ルシファー
「………魔女、蛇食べナイ。」
ダニエル
「……あ?何の話だよ。蛇なんか誰も食わねぇだろ気持ち悪ぃ。」
開けた草原を抜け、林に足を踏み入れる二人。木々の葉で日差しが遮断された林の中はうっすらと霧がかかり、草原と比べて大分気温が低い。びっしりと生える苔 が地面の岩をキレイな深緑色に染め上げている、何とも神秘的な森だ。
先程いた草原では数匹しか目視する事ができなかった不迷虫だったが、この森に入った途端にもう既に十匹以上は確認している。……どこか巣が近いのかもしれない。その巣を探り当てればあの研究変人のルドルフが大喜びをするであろう。……それに、ウィリアムの蘇生が成功した後でどちらにせよアレンの蘇生に再び不迷虫が必要になるのだ、多いに越したことは無い。
前を歩くダニエルに続くルシファーは苔で足を滑らせぬように、地面に張り巡らされている木々の根に躓 かぬように、慎重に足を進める。
ダニエル
「……お前ってそういう所しっかりしてんのな。」
時々振り返ってはこちらを確認してくれるダニエル。不迷虫を探し始めて半日が経ったが、今ではルーシーとあだ名をつけて呼ぶようになった。ルシファーの方も心なしか口数が増えた気がする。退屈そうな旅も、相棒が居れば少しはマシなものだ。
ルシファー
「……こっち。」
ダニエル
「何?何かいた?」
ルシファー
「匂い、スル……。」
ダニエル
「お前の嗅覚は犬並みだな。……ウェアよりも良いんじゃねぇの?」
ルシファー
「……ウェア?」
ダニエル
「狼男の友達だよ、あとヴァンパイアの奴と……最近はミイラ男の奴とも知り合ったんだ。皆面白ぇ奴らでな……」
林の中でポツリ、ルシファーが足を止めてその話を聞いている。
ルシファー
「トモダチ………。」
ダニエル
「お前には居ねぇの?」
『今日から私たちは、友達だね!』
空っぽのはずの心の中に響く、あの声……。まただ、握りしめられるように胸がきつくなる。
ルシファー
「………アレン………。」
ダニエル
「…………!」
聞き間違えだろうか?……今確かにルシファーの口からその名前が聞こえた気がするのだ。瞬きもせずにこちらを見つけるルシファー。彼は今、一体何を考えているのだろうか。
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