63 / 68
第七話 虹色の雫 3
アレン
「………きゃぁああああ!!!」
………叫び出した。凄く嬉しいのかな?
どれがアレンの好みか分からず、結局全部皿の上にのせてみたのだ。カエル、蛇、そして虫は一応二種類用意した。ぷっくりと良く太った芋虫と、歯ごたえを楽しめる殻を持った虫。どれも締 めてあるから動きはしない。とても操り人形とは思えないほど配慮が行き届いている………はずが。
先程からアレンの絶叫具合が半端ではない。どう見ても喜んでいる訳では無さそうだ。ルーシー特製のオードブルをウェイターのようにその手にのせ、逃げ回るアレンを追いかける。………食前の運動なのだろうか?お腹を空かせてもっと食べれるようにしているのか。不思議に思いながらもそんなアレンの遊びに付き合ってやる優しいルシファー。
アレン
「こ………来ないでぇぇぇぇえええ!!!」
ルシファー
「コレ………何テ遊び?」
アレン
「……いやぁぁああああ!!!」
魔女の遊び方って変わってるなぁ……ま、面白いからいいけど。
走り回っている最中に皿の上から転がり落ちてしまった芋虫を拾い上げた。それをプニプニと指先でつまんでみる……「焼いた方が良かったのかな?」そんな事を考えながらご馳走の皿を床の上に置き、部屋の隅で膝を抱えて泣きじゃくるアレンの隣に並んで同じように膝を抱えて座り、彼女の顔を覗き込んだ。
ルシファー
「……ドウシテ、泣いテルの……?」
アレン
「気持ち悪いんだもん………!」
ルシファー
「………俺が?」
その問いにアレンは顔を上げ、首を横に振った。
アレン
「……違うよ、あなたじゃない。私はカエルも蛇も虫も食べないよ。」
嫌いだったのか。………なら始めからそう言えばいいのに。
ルシファー
「鶏は………好き?」
その質問には「うん」と頷き、アレンはここに来て初めて笑顔を見せた。
ドクン………。
ルシファー
「………!」
今、何が起きたんだろう……。ダディーが怒って僕の心臓を突っついたのかな?
……いや、その痛みはアレンの顔に近付くにつれ強まっていく。痛みと呼ぶにはあまりにも弱く、その痛みには刃物が身体に突き刺さった時のような鋭利さもない。……不思議な感覚だ。
唇が触れてしまいそうな距離にあるルシファーの顔、そして後ろは壁……逃げ場のないアレンにできる事はこの瞳をじっとみつめてくる彼を見つめ返す事だけ。
アレン
「な………何?」
………今度は急に顔が赤くなった。魔女って何だか変わった生き物だなぁ。こうやって自在に体の色を変えられるトカゲならダディーの研究所で見たことあるけど……もしかして舌も長いのかな?
アレンの顎を掴み上に傾ける。親指で彼女の下唇を抑えパカっと口を開くと、ルシファーはアレンの口の中をまじまじと観察した。
アレン
「…………!」
ルシファー
「……べーして。」
自分が囚われの身だということに変わりはない……ここは言う事を聞いておくべきだろう。アレンは躊躇いながらゆっくりと舌を覗かせた。
ルシファー
「……ソレだけ?」
………やっぱりトカゲとは違う生き物なんだな。体のパーツは僕のとあまり変わらないみたいだ、手足は二本ずつあるし尻尾は無い。舌の長さも同じくらい。
ルシファーも自らの舌を出して見せた。アレンの舌と自分の舌とを見比べている内に、近づけ過ぎて舌がペタっ…と触れ合った。
アレン
「…………!」
ルシファー
「………濡れてル。」
この子の舌も、僕のみたいに濡れていてザラザラしていない。もしかして死神と魔女って近い種類だったり……するのかな?
顔を真っ赤に染め、言葉を話さなくなったアレンの体調を気にするルシファー。この女の子からは初めて気付かされることが多くある。叫んだり、泣いたり、笑ったり……忙しく表情を変える彼女は、ルシファーにとって見ているだけでも十分に楽しめるのだ。
ともだちにシェアしよう!