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第七話 虹色の雫 4
長い木の枝を手に持ち、道を塞ぐツタを叩き落としながら進むダニエルが思い出話をルシファーに聞かせる。
ダニエル
「………カエルで思い出したけどさぁ、昔にな?リリが『あんたちょっと、カエル捕まえてきて。何ガエルでもいいから』つって俺に言った訳よ。何か調合に必要なんだけどその時切らしてたらしくてな。……んで面倒くさかったけど仕方ねぇから一生懸命探してさぁ、捕まえて持って帰って来てテーブルの上に乗せたんだわ。乗せたっつーか乗ったんだよ、カエル君が自分で。そんでリリが『……え、あんた何やってんの?ビーカーに入れといてよ、ビーカーに!』って言った瞬間、カエル君がピョーン!ってリリの方にジャンプしたんだわ。そしたらあのババア「ぅぁああああああ!!」とか言って絶叫して家の中を走り回り出した訳よ、怪物みたいに。んで丁度この辺に変な寝ぐせがついてたんだよ、だからもうメデゥーサだよね。カエル君の方がビックリしてたもん、ババアに。……てかそんなんで魔女とかやっていけるのかね?」
そう自分で話しておきながら、自滅してクスクスと思い出し笑いをしているダニエルを何となく視界に入れ、歩みを進めるルシファー。……やはり魔女はカエルや蛇が苦手らしい。それは魔女だからなのか、それともただの個体の性格なのかは未だ不明な点だ。そう言えば先程から視界に入る不迷虫の数が倍以上に増えた。先程は僅かにしか感じなかったその匂いも、今ではこの辺り一帯に充満している。……間違いない。
ルシファー
「……巣ガ近い。」
ダニエル
「ルドルフは大木の根本か幹か……洞穴の中かって言ってたな。この辺にでけぇ木は無ぇし、どっか洞穴でも探してみるか。」
ここはきっと二手に分かれて探した方が無難だろう。……その時一匹の不迷虫が拳ほどの大きさの岩の隙間へと入って行くのが見えた。少し様子を伺うと、続いて他の不迷虫も同じ場所へと入って行った。
ダニエル
「……見つけた。」
だが問題は、その入り口の大きさである。無暗に岩をどければ中の巣も間違いなく崩れ落ちるだろう。中がどんな構造になっているのか把握できない以上、瞬間移動で入るのも危険だ。
入り口の小さな穴から中を覗くルシファー。洞穴の中は意外と広いみたいだ。彼が穴の中を良く見渡せるようにと、ダニエルがその手の平から出した灯火 をほんの岩の隙間から中へと送った。青白い明かりがユラユラと辺りを照らす……この洞穴 には奥行きがある。……いや、深すぎる……これは洞穴ではない、巨大な洞窟 だ。
ルシファー
「中、安全……」
ダニエル
「行くぞ。」
その言葉と共に二人の姿はその場から消えた。
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